「介護現場の人手不足は変えられる」事業所×地域がWin-Winになる“新しいお仕事”

「介護現場の人手不足は変えられる」事業所×地域がWin-Winになる“新しいお仕事”

地域人材の“隙間時間”を活かす―山梨県モデル事業から見えた新たな人材活用の形―

 介護現場の生産性向上に関するガイドラインの作成など、2017年から国の施策づくりに関わり介護分野の変革をリードしてきた株式会社TRAPE(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:鎌田大啓)は、ウェルビーイングにあふれた介護事業所の実現を目指し、現場の業務改善やDXに不可欠な「チームづくり」や「課題の見える化・分析」を支援する無料のオンラインツール「生産性向上くん®」の提供と、「生産性向上」「働きがい向上」「リーダー育成」を同時に実現する伴走支援サービス「Sociwell(ソシウェル)」を展開する中で、「令和7年度 山梨県 介護助手等普及推進事業」を受託し、介護助手活用に向けてモデル事業所へ伴走支援を実施しました。

その結果、地域の『隙間時間で働きたい』という介護助手の潜在的なニーズを掘り起こし、介護職員は心にゆとりを持って本来の専門的なケアや利用者と向き合う時間を確保し、地域住民はやりがいのある活躍の場を得て、利用者はより手厚いサービスを受けられるという、現場・地域・利用者の「三方良し(Win-Win)」の好循環を生み出しましたので、報告いたします。

令和7年度 山梨県「介護助手等普及推進事業」とは

 山梨県の委託を受けた山梨県社会福祉協議会が主導する本事業は、介護人材の確保・定着、介護の質の確保、多様な人材の介護現場への参加を促進するため、介護助手の普及促進を行う事業です。
2040年にかけて、特に介護需要が高まる85歳以上人口が増加する一方、少子高齢社会の進展に伴い、生産年齢人口は急速に減少することが見込まれています。限られた人材の中で、介護現場における多様化・複雑化するニーズに対応するためには、介護職員のキャリアや専門性に応じた機能分化を進めるとともに、多様な人材が連携するチームケアの実践が必要となります。

そこで山梨県では介護助手を「ケアアシスタント」と呼称し、利用者に直接触れて行う介護以外の「間接的業務」を担う人材としてその普及推進を図っています。ケアアシスタント等の新しい人材の手を借りることで、介護職員がより専門性の高い業務に専念できる環境を整備し、職場環境の改善を図っていきます。 さらに、こうした新たな役割を創出することにより高齢者を初めとした多様な人材の介護分野への参入を促進し、介護人材の確保につなげていくことを目指します。

主な事業内容

<モデル事業所への伴走支援>
「ミスマッチを防ぐ介護助手の導入フロー」に基づく導入支援、住民向け説明会の準備・運営支援、導入後の効果検証と成果報告会の実施まで一貫してサポート

<普及促進(セミナー等)>
事業者向けセミナーの開催、取組詳細ステップの解説、個別相談窓口の開設、県内全体への取組普及を目的とした手引きの作成

ケアアシスタント(介護助手)とは、介護現場の専門性を支える「新しいお仕事」

ケアアシスタントは、介護職が“専門業務”に専念できる環境作りを支える「新しいお仕事(役割)」です。
人々の生活を支える介護の仕事には、大きく「直接業務」と「間接業務」があります。

  • 直接業務:食事・入浴・排泄・移動介助など、利用者と直接かかわる業務(本来担うべき、専門業務)
  • 間接業務:掃除・洗濯など、利用者とは直接関わらない、快適な生活環境を整える業務(資格不問の業務)
「生活」を支える介護の仕事だからこそ、その中には「一般的な生活スキル」があればできる仕事もあります(間接業務)

これまでは介護現場での業務は全て専門職が担ってきましたが、少子超高齢社会において、介護ニーズは高まる一方、生産年齢人口は減っています。その状況下でもケアの質を維持・向上させるために多くの介護事業所が挑戦をしています。

その1つの打ち手として、「直接業務」「間接業務」に区別し、役割分担を図ることによって、介護職員が専門業務に集中できる体制を整え、利用者一人ひとりに丁寧に寄り添う質の高いケアの実現が目指されています。この「間接業務」を担うのが「ケアアシスタント」であり、ケアアシスタントになるために特別な資格は必要ありません。

本事業における成果(一部抜粋)

  • 職員採用が難しい状況の中、本事業では地域人材を活用したケアアシスタントを4名採用。当初の想定を上回る人材確保により、これまで手が回らなかったリネン交換や居室清掃などの間接業務を担う体制を構築しました。
  • その結果、専門職は本来担うべきケア業務に集中できるようになり、これまで十分に実施できていなかった歩行訓練や生活リハビリの時間を創出。マルチタスクから解放されたことで、利用者一人ひとりと深く関わることができる環境へと変化しました。
  • また、本取り組みでは、お仕事説明会で提示した役割と実際の業務に相違がない「誠実な受け入れ」を徹底しました。この姿勢がケアアシスタントの安心感につながり、「働ける喜び」や新たな役割意識を醸成しました。結果として、自主的な情報交換や交流が生まれるなど、地域住民の社会参加の機会が広がり、生きがいや介護予防にも寄与しています。
  • さらに、元利用者家族が「恩返しに働きたい」と参画するなど、地域とのつながりが深化。当初1〜2名の採用予定に対し、最終的には5名の採用を実現しました。
  • 加えて、これまで間接業務の負担から生じていた職員間のわだかまりや不満も、ケアアシスタント導入と同時に「どのような事業所でありたいか」を対話し続けたことで解消。現在では、ケアアシスタントと専門職双方から感謝の声が生まれ、事業所全体が一体感のある“ワンチーム”へと進化しています。
リネン交換をするケアアシスタントの
様子
間接業務を任せたことで生まれた時間で、介護職員が利用者とゆっくりと歩行訓練ができている様子
現場リーダーが、ケアアシスタント導入を通して目指す姿について、職員と目線合わせをしている様子

本事業を通して見えてきたこと

■ 成功の鍵は「現状の見える化」と「新しい役割分担の明確化」

本事業が単なる人手不足の解消に留まらず、現場へのスムーズな定着と職員への活気をもたらしたのは、採用前に、「ミスマッチを防ぐ介護助手の導入フロー」に沿って準備を進めてきたからです。

具体的には、今の業務の流れ・役割分担を棚卸しし、依頼したい業務を明確にした上で、ケアアシスタント採用後の業務フローのイメージを持ち、採用活動に臨みました。これにより、新しく入る地域住民は「何をすればいいか」という不安なく初日から安心して現場に入ることができ、介護職員もまた「何を任せられるか」を正しく理解できました。

■「お仕事説明会」で見えてきた、地域住民の確実な就労ニーズ

モデル事業所が所在する圏域ごとに各1回、地域住民を対象とした「お仕事説明会」を開催しました。広報は新聞折込チラシ等にて行い、合計75名の参加がありました。

参加者の年代(全会場合計)

広報チラシ(例)

幅広い年代の参加があった中、60~70代の参加が75%を占めました
仕事内容がイメージしやすいよう、ケアアシスタント業務を身近に感じてもらえるように工夫しました

参加者の声(一部抜粋)

  • ケアアシスタントという働き方について知ることができてよかった
  • (高齢でも)まだ人の役に立てると感じた
  • 経験したことのない仕事なので、不安もあるが、やったみたいと思った
  • コンビニで働くことも考えているが、ケアアシスタントとして働くことも視野に入った
まず全体説明を聞いて「これならできそう!」と就労イメージを高めたので、続く「個別相談&お仕事マッチング」の時間も大変盛り上がりました

【モデル事業所の職員・ケアアシスタントの声】(一部抜粋)

「人がいない」と嘆くのではなく、地域に眠る「誰かの役に立ちたい」という想いを信じ、受け入れる準備を整える一歩が、介護の現場、そして地域そのものを強くしていくと私たちは確信しています。職員・ケアアシスタントの声を紹介します。

<モデル事業所職員>

  • ケアアシスタントの導入ステップで行なった「業務棚卸し」は、自分たちの業務を改めて振り返る良い機会となった
  • ケアアシスタント採用後、介護職員の浮いた時間で、今までできなかった歩行訓練ができ、とても良かった
  • テーブル拭きやゴミ集めなどをしてもらうことで、介護職員は利用者の支援に集中できている
  • ケアアシスタントが入ってくれて、今までよりも利用者とゆっくり話す時間が増えた
  • 利用者対応に追われている状況であったので、ケアアシスタントが来て、とても助かっている
  • 介護職員からケアアシスタントへの感謝の声が聞かれる様子を見て、取組を頑張ってきて良かったと実感している

<ケアアシスタント>

  • お仕事説明会で聞いた通りの仕事内容だったので安心して働けている
  • 70代でまた、ケアアシスタントという、やりがいのある仕事に出会えて嬉しい
  • 最初は不安もあったが、手順書などが整っていたので、仕事を覚えやすかった
  • 職員が優しく教えてくれるので働きやすい
  • 元々やっていた家事や仕事に近いので、「こんな仕事がしたい」 と思っていたイメージにピッタリだった
  • せっかく勤められたので、時間いっぱい活躍したいし、これからも職員の助けになりたい
  • 友達でもケアアシスタントをやりたい人は多いと思うので、多くの事業所が求人を出せばいいと思う

【成果報告会 登壇事業所の経営者の声】

医療法人健栄会 
副理事長 中込敏様

 今回、当施設では介護職員の人員確保と業務負担軽減を目的に、間接業務を担うケアアシスタントを導入いたしました。清掃やリネン交換、物品補充などを担っていただくことで介護職員がご利用者様への直接ケアに専念できる時間が確実に増えています。
 導入当初は業務分担や連携面で戸惑いも見られたと思いますが役割を明確にし対話を重ねる中で、チームとしての一体感が高まってきました。
 経営層としても、職員の表情や業務の流れにゆとりが生まれていることを実感しております。結果として時間外労働の削減や職員満足度の向上にもつながりました。
 今後は教育体制をさらに整備し、ケアアシスタントがやりがいを持って長く活躍できる環境づくりを進めるとともに、より質の高いサービス提供を目指してまいります。

特別養護老人ホーム しもべ荘
施設長 内田元樹様

 ケアシスタントの導入は、当初、役割分担や業務の切り分けが適切にできるのか、また本当に必要なのかといった不安もあり、現場でも戸惑いが見られるなど円滑なスタートとは言えませんでした。しかし、伴走支援を受けながら業務整理を重ねる中で目的や範囲が明確となり、徐々に理解と協力体制が深まりました。
 その結果、これまで十分に時間を確保できなかった個別リハビリやレクリエーションの充実が図られ利用者に向き合う時間の確保につながりました。
 経営の立場としては、丁寧な説明と現場との協働そして負担軽減の効果を継続的に検証することが重要であると感じています。
 本取組は、人材確保や高年齢化への不安を抱える当施設にとって、職場の魅力向上と業務負担の軽減につながる意義ある一歩となりました。

地域密着型特別養護老人ホーム
施設長 三浦大輔様

 職員一人ひとりが『おりひめで働いてよかった!』と思える職場にしたいと考えてきました。
 これまでは、終わりの見えない業務にプレッシャーを感じ疲弊する職員の姿もありましたがケアアシスタントの導入によって、現場に『ゆとり』と『笑顔』が戻ってきました。『リネン交換や掃除を任せられることでケアに集中できるようになった』という声は組織改革の大きな成果です。
 役割を分かち合うことで、お互いを尊重し、助け合えるチームへと成長しています。
 この良い循環を止めることなく、職員にとっても利用者様にとっても、最高に心地よい場所であり続けるようこれからも全力を尽くします!!!

【山梨県様からのコメント】

 山梨県では、介護職場において清掃・洗濯・配膳などの間接的な業務に従事される方に「ケアアシスタント」という呼称を用いており、その導入を検討している施設に対する支援に力を入れております。
 今回の事業では、県内を4つの圏域に分けて各1か所ずつのモデル事業所に手を挙げていただき、アドバイザーである(株)TRAPEさんの伴走支援を受ける中で、モデル事業所における導入と定着、成果報告などを通じたその手法の横展開までを担っていただきました。
 導入の肝となる業務の切り分けについては、現状の業務の把握から始まるため、特に現場において、目の前の介護業務に+αの負荷がかかり大変な思いをされたことと伺っております。
 そのような大変な作業を行う上で、(株)TRAPEさんにはslackを活用したいつでも相談ができる体制や作業工程を明示しながら進めていただくなど各施設の状況に沿った形で支援をしていただきました。
 12月に各圏域で実施した「お仕事説明会」では、モデル事業所による募集も兼ねたケアアシスタントの周知の場として多くの住民の方にご参加をいただけただけでなく、施設によっては想定以上の採用につながるきっかけにもなり、大きな成果を得ることができました。 今回の取組成果を手引きの形で集約し、県全体に還元することにより、ケアアシスタントの周知と定着を促し、もって山梨県の介護現場の生産性向上がなお一層進むよう今後も取組を進めていきます。 

山梨県社会福祉協議会(介護支援センター)様からのコメント

 山梨県社会福祉協議会(介護支援センター)は、県から委託を受け介護生産性向上総合相談窓口を設置し、介護現場の生産性向上に関する相談をワンストップで受け、総合的な支援を実施しています。
 取り組みの一環とし、介護人材確保と介護の質の担保や向上、多様な人材の介護現場への参加を促進するため、資格や経験がなくても働くことができる「ケアアシスタント」の導入を推進しています。県内全域により実践的に普及させるため、R7年度はモデル事業所として、県内の特別養護老人ホーム2施設、介護老人保健施設1施設、通所介護1施設の計4施設を選定。株式会社TRAPE(以下、TRAPEという。)の支援を得ながら、各事業所のありたい姿を目標に、伴走支援を実施しました。
 TRAPEの現場に寄り添った支援のもと、導入前の準備として、現場の業務の洗い出しと切り分けを行いました。身体介助等の介護業務と、清掃・配膳等の周辺業務を明確にし、新たにケアアシスタントを採用・導入したことで、介護職員が利用者への専門的なケアに集中できる時間が増え介護の質の向上に繋がりました。
 先日開催された成果報告会では、導入のプロセスが共有され、ケアアシスタント導入による生産性向上の効果が改めて確認されました。センターではこの成果を受け、モデル事業所の取り組みを反映した「ケアアシスタント導入の手引き」の改訂も行いました。
 モデル事業所として先立てて培われた知見を県内全域に波及させ、介護現場が持続可能なものあり続けられるよう、また誰もが働きやすい魅力ある介護施設が県内全域に拡大していくことを目指し今後も取り組みを続けて参ります。

成果報告会後の集合写真(山梨県・山梨県社会福祉協議会・成果報告会登壇事業所・TRAPE)

主な事業実績先
厚生労働省
広島県
静岡県
山梨県
岡山県
石川県
和歌山県
神奈川県
滋賀県
愛知県
埼玉県
横浜市
柏市
堺市
山形市
寝屋川市
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
介護職業サポートセンターひろしま
あおもり介護生産性向上相談センター
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
社会福祉法人 横浜市リハビリテーション事業団
公益財団法人 いきいき岩手支援財団
社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団
FUJITSU 富士通Japan
freee株式会社
山梨県介護福祉総合支援センター
公益財団法人 介護労働安定センター 大阪支部
公益財団法人 介護労働安定センター 奈良支部
公益財団法人 介護労働安定センター 山口支部
公益財団法人 介護労働安定センター 鳥取支部
公益財団法人 介護労働安定センター 佐賀支部
公益財団法人 介護労働安定センター 石川支部
公益財団法人 介護労働安定センター 茨城支部
公益財団法人 介護労働安定センター 香川支部
シルバー新報
月刊高齢者住宅新聞
シルバーケア新聞
あいちロボット産業クラスター推進協議会
社会福祉法人 愛媛県社会福祉協議会
一般社団法人 栃木県老人福祉施設協議会
一般社団法人 鹿児島県老人福祉施設協議会
一般社団法人 新潟県老人福祉施設協議会
社会福祉法人 徳島県社会福祉協議会 徳島県老人福祉施設協議会
岡山県老人福祉施設協議会
広島県老人福祉施設連盟
社会福祉法人 青森県社会福祉協議会
社会福祉法人 富山県社会福祉協議会
一般社団法人 山形県老人福祉施設協議会
北海道デイサービスセンター協議会
岐阜県デイサービスセンター協議会
福井県デイサービスセンター協議会
九社連老人福祉施設協議会
佐賀県介護老人保健施設協会
広島県介護老人保健施設協会
一般社団法人 滋賀県介護老人保健施設協会
一般社団法人 全国介護事業者協議会
中・四国身体障害者施設協議会
一般社団法人 日本福祉用具供給協会 中国支部
大分県社会福祉介護研修センター