令和6年度 横浜市介護事業所業務改善支援事業 実践報告
介護における生産性向上ガイドライン作成など、2017年から介護分野の生産性向上のためのさまざまな国の施策づくりで中心的な役割を担い、ウェルビーイングに溢れた介護事業所を創出するために「生産性向上」「働きがい向上」「リーダー育成」の3つを一度に実現することができる生産性向上伴走支援サービス「Sociwell(ソシウェル)」を展開している株式会社TRAPE(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:鎌田大啓)は、令和6年度横浜市介護事業所業務改善支援事業において、4つのモデル介護事業所に対して伴走支援を実施し、成果を生み出すことができましたのでご報告させていただきます。
【令和6年度横浜市介護事業所業務改善支援事業について】
日本の高齢化は世界に例を見ない速度で進行しているなか、横浜市においては足元の高齢化率は25%程度であるものの、その人口の大きさがゆえに後期高齢者増加による介護施設・サービスの需要と業務量増加への影響は今後相当な規模になるものと想定されます。また、現役世代の減少に加え、都市部は企業や商業施設等も集中しており、他の業界での就業機会に溢れているため、DX化や職場環境、処遇等の改善が進まないと介護業界の人材確保は困難を極めていくことが想定されます。このような状況下で、介護サービスの質を確保しながら介護職員の働く環境を改善し、介護人材の確保・定着を推進するためには、生産性向上の取り組みが必要不可欠です。
本事業は、横浜市の介護事業所の中から4事業所程度のモデル事業所を募集・選定し、そのモデル事業所に対してICT機器や介護ロボットの活用、介護助手の活用、多様な働き方の推進等を通じた生産性向上の取り組み支援を実施するものです。さらに、本事業の活動内容や成果についてSNSや成果報告会等を通じて横浜市の介護事業所に発信することで、介護事業所における生産性向上の取り組みへの理解促進を図り、その取り組みを拡大・推進します。

【本事業におけるTRAPEの取組内容と特徴】
- 横浜市内の介護事業所向けの生産性向上セミナー
- 生産性向上の取り組みについて伴走支援を行うモデル事業所の選定支援
- 横浜市とともに、モデル4事業所を一定の選定基準に基づき選定
- モデル事業所への伴走支援
- 2018年にTRAPEが実際に施設サービス・在宅サービスの介護事業所に伴走支援を行い、そのエッセンスをまとめて作成された「生産性向上ガイドライン」を軸に、TRAPEオリジナルの生産性向上伴走支援サービスSociwellのツールなどを介護事業所の状況に合わせてカスタマイズしてご提供
- 弊社カスタマーサクセス(担当者)が、オンラインで日常的にプロジェクトリーダーと密な対話を行い、プロジェクトリーダーを孤独にせず改善活動推進を後押し
- 結果として、定性的・定量的な業務改善効果はもちろん、現場マネジメントができるリーダーづくり、チームビルディング、そして目指す職場に向けた現場の変化を生み出す
- 広報動画作成
- 介護事業所における業務改善を促進するため、モデル事業所へのインタビュー等の動画を作成し、広く情報発信
【令和6年度モデル事業所の取り組みテーマと取組後の成果(一部)】
直接業務やケアの時間が増加して利用者QOLが向上した取り組み
1日の業務スケジュールを10分単位で再構築し、タイムスタディや業務棚卸しに基づいて無駄な間接業務の削減を図った。これにより、利用者との直接関わる時間が増加し、利用者QOLの向上につながるとともに、職員のケアへの意識が高まった。
情報共有や報連相の見直しで働きがい向上と新規利用者増加に繋がった取り組み
業務・ケアに関する情報共有が不十分であった課題を解決するため、報連相のフローチャートを作成。管理者ではなく、サービス担当責任者や事務職員に報連相の窓口となってもらうことで、情報共有の効率化と管理者の負担軽減を実現した。また、服薬変更があった際の共有方法を見直すことで、服薬の漏れがなくなった。最終的には、職員の働きがい向上や新規利用者の獲得へとつながっている。
書類業務時間の確保と利用者情報の共有により職員の働きがいと利用者QOLが向上した取組み
書類業務の時間が取れないことや、見守り負担が大きいという課題を解決するために、業務スケジュールの一部見直しや利用者情報の共有シートを作成した結果、書類時間が確保でき、見守り負担も軽減した。これらにより、職員の働きがい向上や利用者QOLの向上へとつながった。
1日の業務スケジュールと記録業務の見直しで職員の負担軽減につながった取り組み
1日の業務スケジュールを、シフトごとの役割分担も含めて見直しながら10分単位で再構築することで、間接業務の削減および業務の効率化を図った。また、記録様式を見直すことにより記録業務にかかる時間・負担の軽減を図った。これらにより、残業の減少や適切な休憩時間の確保が可能となり、職員負担が軽減した。さらには、利用者とアクティビティ等で関わる時間が増え、利用者満足度の向上にもつながった。
【モデル事業所の職員からの声のご紹介】
- 利用者と関わる時間は確実に増えた実感はあるし、実際に利用者とレクがやれるようになった
- 新しい職員が入ってきても、報連相について迷わなくなった
- 薬の変更表を作成したおかげで、服薬ミスが起こらないようになった
- 書類作成を計画的に行えるようになった。以前だったら、いつやるかを悩み慌ててしまう事もあった
- 記録に時間を費やしていた時間が、利用者との関わりや他の業務にまわすことができている
- 業務スケジュールを作成して、やるべき仕事が明確になり、次に何をすればいいのか組み立てやすくなった。仕事がやりやすい
【モデル事業所の経営者からの声のご紹介】
取り組み状況の進捗については管理者より定期的に報告を受けていましたが、目に見えて変わったことは職場内の整理整頓、環境美化が劇的に改善したことでした。整理整頓は、全てにおける「効率化」の重要なファクターだと思います。「マニュアルの見直し」、「業務内容の明確化」も要するに「業務の整理整頓である」という観点で見たとき、日頃から現場巡回する中で整理整頓の指導をしてもなかなか改善しなかったものが、この取り組みの中で変化したことは思わぬ成果と言えます。
現場は最初この取り組みに対して、負担感や懐疑心もあったようでしたが、取り組みを通じてしっかり最初に伝えた「家庭的な雰囲気の醸成」への環境改善は出来てきたと感じます。またリーダーの取り組み姿勢も今までの管理者頼みな部分から、自身で主体的に行動する場面が見られるようになり人材育成の観点からもよい成果が得られたと感じます。
今回の取り組みを横浜市、TRAPE様が支えてくださったことで、改善が果たせたことに深く感謝いたします。この取り組みで得た成果をもとに、更なる職場の主体性の創造と弊社内の他の事業所への横展開を行い、職員の負担軽減、人材教育のさらなる深化、経営状況の改善、そしてサービスの質の向上に繋げていきたいと思います。
生産性向上という介護サービスに似つかわしくない言葉やワードは当社が以前から取り組んでいる5S活動と重なり、今までの取組みは果たして合っているのか、厚生労働省や横浜市はどの様な介護事業所を模範としているのか、目指して行く方向の先は関わる全ての人を幸せにできるか、その事が知れる絶好の機会と思い伴走支援に手を上げました。
介護現場ではマネジメント業務の学習、基礎知識については教わるが重要視されずに現場最優先で、重要だが緊急ではない領域は、いつの間にか後回しになり、改善が進まないことが多いかと思います。そこを全員参加アンケートで問題点を浮き彫りにしていく現場課題の見える化は、言語は同じでも立場や伝える側と読み込み業務を行う側での違いを明らかにして、情報共有の掲示場所、表示方法、伝え方の業務改善活動に大いに役立ちました。また今回の改善活動については時間の制約と通常業務もある中で所長以下職員一同が問題意識を持って取り組んでくれた事に大変感謝しております。
今後はこの取り組みを礎に関係者全員の幸せを創造し実行できる企業として常に精進して参ります。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
皆様ご存知の通り、日本はこれから年々労働人口が低下し、特に介護業界の人手不足は更に深刻化していきます。当施設においても、すでに看護・介護職員の人員不足が慢性化しつつあります。そのような状況下において、業務そのものを見直し、効率化を進める必要があり、限られた人員でも高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えていくことが重要となります。
生産性が向上することで、職員の負担が少しでも軽減され、利用者様へさらに質の高いケアが提供できるようになれば、より多くの時間を個々のケアに充てることが可能となり、職員のモチベーションアップや定着にも繋がると考えました。
今回の取り組みを通して、日々の業務に流されてしまっていた職員一人ひとりが抱えていた問題意識を見える化し、一つ一つを深堀、改善し成果に繋げることができたことで、「自分たちで自分たちの業務を改善することができる」「一人ひとりの力が集まることで、大きな変化を生み出すことがきる」という自信を持つことができました。私たちが目指す、「健全な経営と職員の満足度が高い施設運営」に向けて、引き続き現場の声をしっかりと反映させながら、利用者様と職員双方にとって働きやすく、過ごしやすい環境を築いて参ります。
当社が伴走支援(横浜市業務改善支援事業)に応募したのは、「職員が誇りを持って働ける環境をつくり、より良いケアを提供する」という強い思いがあったからです。介護現場は常に人員不足の課題を抱え、職員の負担が大きい状態が続いていました。そんな中、「業務改善を通じて、職員の働きやすさとサービスの質を向上させる」という本事業の趣旨に共感し、取組みを決意しました。
実際にプロジェクトを進める中で、1日の業務スケジュールの見直しや記録業務の整理を行い、職員の負担軽減を図ることで、現場に大きな変化が生まれました。最初は戸惑いを感じていた職員も、業務の流れが明確になったことで働きやすさを実感し、チームワークの向上や意見交換の活性化が見られるようになりました。また、休憩時間の確保や残業の削減といった成果も得られ、職員の心理的ストレスが軽減し、利用者様と向き合う時間が増えたことは大きな収穫でした。
この取組みを通じて、業務改善は単なる効率化ではなく、「職員の意識改革」と「質の高いケアの実現」につながることを改めて実感しました。今後も、この学びを継続し、より良い職場環境づくりに努めるとともに、他の事業所にも積極的に展開し、介護業界全体の発展に貢献していきたいと考えています。このような貴重な機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。
【横浜市健康福祉局高齢健康福祉課様からのコメント】
横浜市では、介護現場における業務改善(生産性向上)に対する理解促進を図るとともに、これまで取り組んできたICT機器や介護ロボットの活用のほか、介護助手の活用や多様な働き方等を通じた業務改善を支援するため、新たに「介護事業所業務改善支援事業」を実施しました。
令和6年度は、(株)TRAPE様と業務委託契約を締結し、介護現場における業務改善の取組に対する理解を深めるため、7月に市内介護事業所を対象にキックオフセミナーを開催しました。その後、業務改善を行いたいと考えている市内事業所の中から、4事業所をモデル事業所として選定し、伴走支援をスタートしました。
約半年間にわたる伴走支援においては、(株)TRAPE様が対面やオンラインで細やかにご助言をいただき、各モデル事業所は対話やアンケートを通じて把握した課題解決に向けて、試行錯誤を繰り返しながら改善活動に取り組んでいただきました。
年度末に実施した業務改善成果報告会では、モデル事業所から「改善活動に向けた日々の対話の中で、職員の働きがいが向上した。」「間接業務の削減により、利用者のQOLの向上につながった。」「伴走支援がなければここまで成果は出なかった」等の声をいただき、一定の成果を得ることができたと感じています。業務改善に取り組んでいただいた4事業所の皆様、そして伴走支援いただいた(株)TRAPE様に、感謝申し上げます。
令和7年度はモデル事業所数を8事業所程度に拡充し、事業所の業務改善に資する支援を継続的に実施する予定です。引き続き、横浜市では「新たな介護人材の確保」、「介護人材の定着支援」、「専門性の向上」、「介護現場の業務改善」を4本柱に、介護人材施策を推進していきます。