令和6年度 石川県内事業所への伴走支援モデル事業実践報告
介護における生産性向上ガイドライン作成など、2017年から介護分野の生産性向上のためのさまざまな国の施策づくりで中心的な役割を担い、ウェルビーイングに溢れた介護事業所を創出するために「生産性向上」「働きがい向上」「リーダー育成」の3つを一度に実現することができる生産性向上伴走支援サービス「Sociwell(ソシウェル)」を展開している株式会社TRAPE(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:鎌田大啓)は、公益財団法人介護労働安定センター石川支部様より令和6年度介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業相談窓口における業務アドバイザーを受託し3つの介護事業所に対して伴走支援を実施しました。その成果報告会が2月21日(金)石川県地場産業振興センター本館2階第2研修室にてハイブリッド開催されました。今回の事業で生み出した成果についてご報告させていただきます。
【令和6年度介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業とは】
この事業は、地域における相談窓口の設置、介護ロボットの評価・効果検証を実施するリビングラボ(開発の促進機関)を含む関係機関のネットワークの形成、実証フィールドの整備などを行うことで、全国版プラットフォームを構築し、介護ロボットの開発・実証・普及の流れを加速化することを目指しています。(事務局:エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)
【本事業におけるTRAPEの取組内容と特徴】
- 石川県内の介護事業所向けの生産性向上セミナー
- 介護ロボットを導入しようとする介護事業所の選定支援(石川県内より3事業所)
- 介護ロボット導入前の土台づくりの取組みも含める
- 窓口とともに、県内の横展開まで見据えたモデル事業所を一定の選定基準に基づき選定
- 生産性向上ガイドライン、パッケージモデル等に沿った事業所活動への伴走支援(4〜6ヶ月)
- 2018年にTRAPEが実際に施設サービス・在宅サービスの介護事業所に伴走支援を行い、そのエッセンスをまとめて作成された「生産性向上ガイドライン」を土台にした「介護ロボットのパッケージ導入モデル」を軸に、TRAPEオリジナルの生産性向上伴走支援サービスSociwellのツールなどを介護事業所の状況に合わせてカスタマイズしてご提供
- 弊社カスタマーサクセス(担当者)が、オンラインで日常的にプロジェクトリーダーと密な対話を行い、プロジェクトリーダーを孤独にせず改善活動推進を後押し
- 結果として、定性的・定量的な業務改善効果はもちろん、現場マネジメントができるリーダーづくり、チームビルディング、そして目指す職場に向けた現場の変化を生み出し、今後も自律的に取組むチームづくり
【3つのモデル事業所の取組テーマと取組後の成果(一部)】
3つのモデル事業所の取組内容
● 社会福祉法人 石龍会 特別養護老人ホーム のとじま悠々ホーム様
アンケートや対話によって職員が今一番課題に思っている業務が食事業務であり、その中でも覚醒の低い方への朝の食事介助について不安を抱えていたことがわかった。なぜ覚醒が低いのか利用者の生活リズムを確認するため、見守り機器「眠りスキャン」のデーターを活用し、同時に同一期間における食事介助の時間、量、様子などデーターをとった。そうすると覚醒が低いながらも生活リズムはあり、安定している状態ということがわかり、利用者の状況は一定であることが分かった。そこで分かったことは食事介助時間や職員の関わり方にムラがあることが食事介助の大変さを生み出している要因かもしれないということであった。そこで利用者一人一人の食事に関する平常時の情報(データ)を見える化し、職員の認識を統一し、どのような基準で食事介助をするかについてのルールを作り運用したその結果、利用者に合わせた関わりができるようになり、職員の不安も軽減。職員の食事介助に対する充実感は上がり、職員全員がテクノロジーの活用やデーターを活用したケア実践を実感できた取組みになった
● 社会福祉法⼈福寿会 特別養護⽼⼈ホーム福寿園様
業務時間内に記録時間が設けられておらず、書類・記録業務が行えず、職員が残業したり休日出勤して行うなど、職員にムリがかかり負担が大きかった。また1日の業務の流れについて職員個々の動きのズレが連携不全となり、ムリ・ムダ・ムラが発生し、突発的な業務やヒヤリハットにつながり、職員の精神的・身体的負担が更に大きくなっていた。そのため、1日の業務の流れのマスターラインを作成し、記録時間を設け、また連携をとりやすく協力し合える業務の流れに見直し、環境を整えた。
その結果、突発的業務・ヒヤリハットの発生を未然に防ぎ、身体的、精神的負担が軽減した。また職員負担が軽減され自分たちがやりたいと思っているいいケアの提供ができる取組みとなった
● 社会福祉法⼈三⾺福祉会 地域密着型特別養護⽼⼈ホームみんまのさと様
申し送りを介護ソフト「ほのぼの」で行なっていたが、申し送り内容が属人的で個人差が生まれ、職員によって情報の理解度も違い、うまく情報活用できず、突発的な業務の対応など職員負担が多くなっていた。今回、申し送りの基準・ルールを作成し、申し送りの内容の充実と共通の理解が持てるよう環境を整え、その上で入力頻度の高い内容については「ほのぼの」の機能にある定型文を活用し効率化と内容の統一を図った。この取組を行なっている間、職員理解が得られない期間もあったが、目的共有など対話を繰り返し、理解者を増やしていった。
その結果、情報共有を円滑にし、職員連携がスムーズにいき、職員に余裕が生まれ、利用者との関わりにつなげることができた取組みとなった。
取組後の成果(一部)
【3つのモデル事業所からの声】
- 振り返ると、情報共有がこれまでよりスムーズに行われていたと実感できた
- 介護士からの申し送りが増え、チーム全体の申し送り意識が高まった
- 自分の意見を言うことに対する躊躇が減り、「言ったほうが安心」と思えるようになった
- 職員同士の対話や相談の機会が増え、心理的なゆとりが生まれた
- 「マスターライン」により、時間のかかる業務や改善ポイントが明確になった
- 自分と他職員との業務の動きの違いが見える化され、業務の見直しにつながった
- パソコン作業の時間を意識的に設けることで、時間の使い方への意識が高まった
- 利用者と関わる時間も確保できるようになり、ケアの質の向上にもつながった
- 生産性向上の取り組みにより、実際に行動し変化を体感できた
- 食事介助において、「食べさせなければ」という焦りが軽減された
- 職員の不安が軽くなり、ケアに対する充実感が高まった
- 情報共有はできているつもりだったが、実際には表面的な理解であることに気づけた
- 気づきを深める意識が生まれ、チーム内で「何が分からないか」が見えるようになった
- 職員間の対話や相談が増え、チームで一緒に考える文化が育まれた
- 外国人実習生との信頼関係が深まり、相談や対話が増えた
- 実習生も取り組みの目的や背景を理解し、一緒に進めていく姿勢が見られた
- みんまのさとの今回取り組んだフロアでは、新たなテクノロジーの導入も、うまく進められそうだと感じている
【3つのモデル事業所の経営者からの声のご紹介】
【活動実態】
- スタッフの「やりたい事」は、利⽤者様⽬線かつ法⼈や事業所の理念・⽅針に沿ったもので、⽇頃から伝えているケア⽅針に沿ったものだったので、スタッフのケア意識に感動した
- ユニット内スタッフのコミュニケーションが取りにくい環境(勤務体制・職員配置)があったが、リーダーの意識改⾰で、現環境でもスタッフ間コミュニケーションが取れることを証明してくれた
【今後の期待】
- 今回の取組みで、コミュニケーションは「取れない」ではなく「取られていない」という事がわかった。まずはリーダーの意識改⾰をすすめ、密なコミュニケーションが取れるようにしていきたい
- 今までやろうとして出来ていなかったICT機器、介護ロボットの有効利⽤に今回取り組んだ。今回行った「⾒守り⽀援センサー」から取得できるデータを利⽤し、対象者のケア改善実践したことを、今後は⼊居者様全員に対して、同じように実施できるように標準化し、習慣化させていってほしい
- 今回⾏った実践活動は、実は今まで推進してきていた「業務フロー図」や「24時間シート」、「育成⾯談」や「ユニット会議」の意図するものであったという事を職員に再認識してもらいと思う。今後さらに効率よく同活動を継続・展開していけるよう施設全体で啓発・協⼒・実践していきたい
【おわりに】
- 「ありたい姿の実現のためのテクノロジー機器を活⽤するチーム作りのサポート」において、今回担当リーダー2名が中⼼となるチームが育成出来た
- テクノロジー機器の活⽤についても、「何をどうすればいいか」「どう相談すればいいか」「どう考えればいいか」という事がわかったので、今後はもっと具体的分析をしていけると考えている
⽣産性向上における取り組みの伴⾛⽀援を受けたプロセスにおいて、何よりも現場主導での作業が⼤切だということを改めて知り、同時に現場職員⾃⾝が課題抽出し、その解決に挑むことが、モチベーションと達成感に繋がるということを感じさせられました。結果的には完全ではありませんが、何かをやり遂げた感の⾃信に満ち溢れて⾒えるのは、私だけなのかとも思います。そして、ファシリを務めた職員の成⻑も素晴らしかったと感じています。否定的にならず、前向きに忍耐強く、職員の声に⽿を傾け続ける作業は本当に⼤変だったと思いますが、この経験も彼のスキルとなっていくことだろうと思っています。
最後になりましたが、いつも、広い⼼でサポートしてくださったTRAPEの林さんにも感謝致します。私達の拙い作業を「⼤変でしたね」「素晴らしい」など元気になれるよう声がけと的確なアドバイスで⽀えて頂きました。ありがとうございました。
伴⾛⽀援が終了しても、⽣産性向上を進めることを⽌めることなく、より良いケアを提供できる環境整備と職員育成に邁進したいと強く思っております。
「⽣産性の向上なんて、なんかうそくさいなとずっと思っていた。」⼀⽅「⼈⼿不⾜」「職員の⾼齢化(⾃分を筆頭に)」「利⽤者へのケア」等など課題はどんどん⼭積していく…。
そんな中、昨年8⽉に福井でのセミナーに参加した。啓⽰とまではいかなかったが、「やっぱりやらんなん︕」と何となく決⼼した。こんないきさつで、今回の伴⾛⽀援に参加させてもらった。これが成果というものはまだないが、少なくとも今まで動いていなかったものが動き始めているという実感はある。こんな⾵に⾔ってしまうのは容易なことかもしれないが、委員会のメンバーの努⼒は⼤変なことだったと思う。本当の展開はこれからの活動・運動を待つことになると思うが、先ずは、中間報告という事で。最後にメンバー、スタッフ、伴⾛⽀援をサポートしてくれた⽅々に改めて感謝申し上げる
【公益財団法人 介護労働安定センター 石川支部からのコメント】
介護労働安定センター福井支部が受託させていただいた今年度のプラットフォーム事業については、令和6年1月1日の能登半島地震の影響もあり、石川県のエリアを介護労働安定センター石川支部が窓口となり、生産性向上の取組みに係る伴走支援をTRAPEさまと共に行うこととなりました。
石川県の担当部署とも連携・協議し、金沢市、白山市、七尾市の3事業所をモデル事業所として選定し、9月からオンラインコミュニケ―ションツールを活用した伴走支援が始まりました。取組みのステップ1のキックオフ(目的の共有)からスタートし、経営陣のサポートを受けながら、現場リーダーの方々にはユニットのスタッフとのコミュニケーションに加え、TRAPEさまとのコミュニケーションツールでの対話やWeb会議システムでのミーティングに多大な時間を費やしいていただき、厚くお礼申し上げます。
3事業所の課題はそれぞれ異なりますが、およそ半年にわたり、既存の介護ロボットやICT等も活用しながら業務改善の取り組みを進め、「準備8割の大切さ」、「現場の変革~マスターラインの活用」、「食事業務の見直し~職員の不安をなくそう~」を各事業所のテーマとして成果を発表していただきました。
今回の取組みについて、各モデル事業所においては他のユニットやフロアへの横展開を進めていただければと思います。また、これから生産性向上の取組みを進めていこうとされる事業所や既に取組まれている事業所の方々には、ぜひとも今後の取組みの参考にしていただければ幸いです。
最後に、モデル事業所の皆さま、TRAPEの皆さま、石川県のご担当者さま、本事業に携わられた皆さまに心より感謝申し上げます。今後も働きやすい、働きがいのある職場づくりに貢献できるよう努めたいと思います。