「このまちで 私らしく チャレンジ!」─山形市が再構築した介護予防の新しいカタチ

「このまちで 私らしく チャレンジ!」─山形市が再構築した介護予防の新しいカタチ

山形市介護予防モデル再構築事業(令和4年度〜令和6年度 )

「素敵な役割のあふれる日常を創る」をビジョンに掲げ、令和4年度に厚生労働省の老人保健事業「都道府県による市町村支援に活用するための支援パッケージ策定に係る調査研究」に取り組み、全国の市町村のwell-beingな地域づくりを後押しする「地域づくり支援ハンドブックvol.1.0」を作成するなどwell-beingデザインを通じて人々、組織、地域に新たな可能性や価値を提供している株式会社TRAPE(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:鎌田大啓)は、令和4年度から6年度にかけて受託しておりました「山形市介護予防モデル再構築事業」が無事に完了いたしましたので、ご報告させていただきます。

【山形市との介護業界発の地方創生推進を目的とした包括連携協定】 

~「まち・ひと・しごと」がつながる好循環モデルの構築へ~ 

本協定は、介護分野を起点に「まち」「ひと」「しごと」の三位一体による好循環モデルを実現し、地域社会全体の持続可能な活性化を目指すものです。

1. 「しごと」:地域に必要とされる仕事の創出と変革 

  • 介護を含む人材不足産業では、DXの推進や経営・職場マネジメントの高度化、付加価値を収益に還元できる仕組みづくりなどにより、質の高い働く環境を整備。
    また、地域特性を活かした新たな雇用や事業機会(EC、観光、未活用資源の活用など)の創出にも取り組みます。

2. 「ひと」:多様な人材が地域で育ち、活躍する循環づくり 

  • 若年層、子育て世代、シニアなど多様な人材が、地域で「学び」「働き」「挑戦」し続けられる環境を整備し、働きがいやワークエンゲージメントの向上に向けた制度設計やリスキリングの機会を推進します。特に、介護予防を通じて「元気なシニア」が増えることは、地域社会に活力をもたらす重要な要素です。自分らしい暮らしを続けながら消費を担い、時に仕事や地域活動でも役割を果たす─そんな“活躍するシニア世代”は、いまや地域経済と人口戦略を支える中核的な存在となっています。

3. 「まち」:すべての人が安心して暮らせる地域インフラ整備 

  • 多世代が共に安心して暮らせるまちづくり、防災に強いインフラ投資、スマートシティ化の推進を実施。ICTやデジタルインフラの利活用を通じて、福祉とまちづくりの一体化を図ります。

包括連携協定の内容

  • 健康の保持・増進に関すること
  • 地域共生社会の実現に関すること
  • 魅力ある雇用環境の創出に関すること
  • スマートシティの推進に関すること
  • その他地方創生の推進に資すること及び市民サービスの向上に関すること

本協定に基づく取り組みの一環として、令和4年度より複数年にわたり、市内の介護予防サービスの充実と、それを支えるための介護予防モデル再構築事業に取り組んでまいりました。

【山形市介護予防モデル再構築事業とは】

本事業は、山形市の目指すビジョンである、「高齢者が自らの能力を活かしながら、住み慣れた地域で支え合い、いきいきとした暮らしができる」の実現に向けて実施しました。
介護予防に関する地域支援事業のこれまでの取組成果や課題をもとに、各事業を一体的に再構築することで、より多くの⾼齢者(フレイルの⽅)が元の⽇常を取り戻し、⾃⼰選択・⾃⼰決定のもと、住み慣れた地域で⾃分らしい暮らしができることを目指した事業です。

令和4年度から6年度までの3年間を通じて実施された本事業では、その成果をもとに、令和7年度に山形市にて制度の再設計が行われ、令和8年度より短期集中サービスを軸とする新たな介護予防事業の実装を目指しています。
また、本事業に取り組み、山形市の目指すビジョンを達成することで、高齢者がいきいきとした暮らしができることはもちろんのこと、その先の2040年に予想される介護人材不足への対策にもつなげることを目指しています。

【本事業におけるTRAPE取組内容と特徴】

令和4年度:現場の介護予防に対するリアルな声を把握・整理し、事業見直しに向けた課題を明確化

  • 地域包括支援センター、通所型サービスC事業所(元気あっぷ教室)、生活支援コーディネーターなどに対して事業所訪問にて対話(聞き取り、意見交換)にて実施しました。

令和5年度:主要関係者の規範的統合に向けたスローガン作成&令和5年度モデル事業の実施

【規範的統合】

  • 地域包括支援センター、通所型サービスC事業所(元気あっぷ教室)、生活支援コーディネーターで繰り返し対話を実施しました。
  • そして、みんなで山形市の地域づくりが目指すスローガン「このまちで 私らしく チャレンジ!」を作成しました。

【入口・プロセス・出口が三位一体で取り組むモデル事業の実施】

入口・プロセス・出口を各関係者が、山形市のビジョン達成に向けて一体的に取り組むモデル事業の実施。またケースごとにオンラインツールを使用し関係者で情報共有をリアルタイムで実施しました。

・入口:介護予防マネジメント(地域包括支援センター)
 ・セルフマネジメント(自己選択・自己決定)を前提した自立支援型の目標設定の実施しました。

・プロセス:短期集中プログラムの提供(通所型サービスC事業所)
 ・セルフマネジメント力を向上することを目的とした、面談プログラムセルフマネジメントシート(日記)の活用、口腔・栄養などを含めたプログラムの実施しました。

・出口:社会参加支援(生活支援コーディネーター)
 ・利用者一人一人に合わせた固有の地域資源・活動の場とのマッチングしました。

【関係者への教育】

 ・実際にモデル事業の実施を通した、実践的教育及び実施した内容の振り返りの実施しました。
 ・介護予防・地域づくりチーム(チーム山形市)の全体研修会の実施しました。

令和6年度:今後の再構築に向けてのワーキングの実施し現場の意見やアイデアの集約

  • 地域包括支援センター、通所型サービスC事業所(元気あっぷ教室)、生活支援コーディネーター、山形県歯科衛生士会の代表者によるワーキンググループを開催しました。
    これまで実施してきた短期集中サービスや、令和5年度のモデル事業の内容を踏まえ、今後の短期集中サービスを軸とした介護予防モデルの再構築に向けて、意見やアイデアの集約を実施しました。
  • ワーキングの内容をもとに、関係者ごとに対話の場を設けました。
    対話が円滑に進むよう、事前にアンケートを実施し、ワーキングでの議論内容をフィードバックし、その上で、意見を集約・可視化し、令和7年度以降の制度再設計につながる土台づくりを進めました。

【事業の成果】

令和4年度の各関係者との対話(聞き取り・意見交換)にて、下記図のような声と課題を集約し、全体で共通しました。
対話を通じて見えてきたのは、関係者それぞれが同じイメージや方向を思い描くのが難しく、地域全体としての一体感が少し持ちづらいということでした。
住民にも関係者にも伝わる、山形市としての共通のメッセージやキャッチフレーズがあるとよい、という声が多く聞かれました。

令和5年度は、令和4年度に集約した声や課題感の解決を目的に、介護予防に関わる関係者との対話を重ね、関係者と住民が共に目指す方向をイメージできるスローガン「このまちで 私らしく チャレンジ!」を策定しました。
また、介護予防の「入口」「プロセス」「出口」それぞれの課題解決に向け、関係者が協働して取り組む新たなモデル事業を試行的に実施。従来の一連の流れとは異なるアプローチを展開しました。

このモデル事業では、社会参加を目標とし、単なる運動機能の向上だけでなく、セルフマネジメント力を高めることに着目。面談やセルフマネジメントシート(日記)をプログラムに組み込みました。
その結果、従来の通所型サービスC(元気あっぷ教室)で6ヶ月かけて得られる運動機能向上と同等の成果を、3ヶ月の実施期間で達成。さらに、セルフマネジメントシートや面談を通じて、利用者が日常生活の中でスーパーへの買い物や趣味活動など、すでに社会参加や役割を持っていることも明らかになりました。
本サービスの終了時には、そうした既存の社会参加先へ自然に戻っていく方や、行政サービス以外の新たな社会参加につながるケースも多く見られました。
まさに、スローガンで掲げた「このまちで 私らしく チャレンジ!」の姿が実際のケースを通して実現され、関わった関係者もその効果を実感することができました。

令和6年度は、令和8年度から始まる新たな介護予防事業の再構築に向けて、これまでの取り組みや令和5年度のモデル事業の内容も踏まえながら、「今後、何を・どう進めていくべきか」を検討するためのワーキングを実施しました。
参加者は、地域包括支援センター、通所型サービスC事業所(元気あっぷ教室)、生活支援コーディネーター、山形県歯科衛生士会の関係者の代表です。

ワーキングでは、以下のような関係者の声が挙がりました

  • 「利用者との出会いの時点から、元気になれる可能性があることをしっかり伝える必要がある」
  • 「単に運動を提供するのではなく、小さなステップごとに目標を設定し、本人が自ら成長を実感できることが大切」
  • 「自己決定・自己選択を促すためには、十分な情報提供が不可欠」

これらの意見は、まさにスローガン「このまちで 私らしく チャレンジ!」の実現に向けた本質的な要素を含んでおり、山形市および山形市基幹型地域包括支援センターが中心となって進めてきた対話の成果といえます。
こうした対話の積み重ねを通じて、関係者一人ひとりの本質的な気づきや具体的な提案が引き出され、再構築に向けて自律的に動けるチームが育まれつつあります。

【山形市様からのコメント】

山形市
福祉推進部
次長(兼)課長 阿部 伸也様

山形市では、総合事業は「まずはC型から」として、通所型サービスC=「山形市元気あっぷ教室」を中心に介護予防を推進してきました。
これまでも関係機関のご努力で一定の効果を上げ、他市より一歩先んじて進んできたと思っていますが、一方で、サービス対象者像の明確化、元気あっぷ教室終了後の社会参加や活動的な日常生活の継続、2040年を見据えた持続可能な制度構築、そして市担当部局と関係機関のさらなる意識共有に課題も感じていました。

令和6年度は、令和5年度までの規範的統合と意欲を引き出すプログラムのモデル事業へのチャレンジ結果を踏まえ、地域づくり支援に多くの知見と実績を持つ㈱トラピ様の伴走を受け、まずは地域マネジメントを担う市担当部局で、介護予防の全体像をあらためて見つめなおしました。
そして、引き続き「このまちで私らしくチャレンジ!」をスローガンに、地域包括支援センター・元気あっぷ教室事業所・生活支援コーディネーター等の関係者でワーキングを行い、「目指す姿=どのような対象者に対して・どのような視点で支援し・何を目指すのか」について、根拠があって、身近で実感が持てるものとして可視化・共通化を進めました。

ワーキングでは、それぞれの立場から、専門職の視点と地域住民の視点で活発で前向きな対話が行われ、とても嬉しく感じています。そして、これから「チーム山形市」で介護予防がさらに大きく前進していくものと、みんなの期待感が高まっています。
市と関係者の対話による意識共有を大切にしながら、住み慣れたまちでその人らしくチャレンジできる山形市になるよう、チームで前進していきたいと思います。

主な事業実績先
厚生労働省
広島県
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山梨県
岡山県
石川県
神奈川県
滋賀県
愛知県
埼玉県
横浜市
柏市
堺市
山形市
寝屋川市
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
介護職業サポートセンターひろしま
あおもり介護生産性向上相談センター
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
社会福祉法人 横浜市リハビリテーション事業団
公益財団法人 いきいき岩手支援財団
社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団
FUJITSU 富士通Japan
freee株式会社
山梨県介護福祉総合支援センター
公益財団法人 介護労働安定センター 大阪支部
公益財団法人 介護労働安定センター 奈良支部
公益財団法人 介護労働安定センター 山口支部
公益財団法人 介護労働安定センター 鳥取支部
公益財団法人 介護労働安定センター 佐賀支部
公益財団法人 介護労働安定センター 石川支部
公益財団法人 介護労働安定センター 茨城支部
公益財団法人 介護労働安定センター 香川支部
シルバー新報
月刊高齢者住宅新聞
シルバーケア新聞
あいちロボット産業クラスター推進協議会
社会福祉法人 愛媛県社会福祉協議会
一般社団法人 栃木県老人福祉施設協議会
一般社団法人 鹿児島県老人福祉施設協議会
一般社団法人 新潟県老人福祉施設協議会
社会福祉法人 徳島県社会福祉協議会 徳島県老人福祉施設協議会
岡山県老人福祉施設協議会
広島県老人福祉施設連盟
社会福祉法人 青森県社会福祉協議会
社会福祉法人 富山県社会福祉協議会
一般社団法人 山形県老人福祉施設協議会
北海道デイサービスセンター協議会
岐阜県デイサービスセンター協議会
福井県デイサービスセンター協議会
九社連老人福祉施設協議会
佐賀県介護老人保健施設協会
広島県介護老人保健施設協会
一般社団法人 滋賀県介護老人保健施設協会
一般社団法人 全国介護事業者協議会
中・四国身体障害者施設協議会
一般社団法人 日本福祉用具供給協会 中国支部
大分県社会福祉介護研修センター