介護事業所の管理者であれば、一度は「介護職員の離職」を課題に感じた経験があるはずです。
この記事を通して、なぜ職員が離職してしまうのか、どのような対応をしていけばいいのかをお伝えさせていただきます。
介護職員の離職はメディアでよく取り上げられるため、離職率が高いという先入観をもつ方々が多くいるのではないかと想像されます。
しかし、介護職の離職率は年々、低くなってきているのが現実です(参考文献①)。
それでも、「現場の人材は足りていない」と感じられているのではないでしょうか。
今回は、誰もが頭を悩ます、「介護職員の離職」について、3つの原因と施策について説明していきます。
なぜ離職するのか?
そもそも、介護職員はなぜ離職するのでしょうか?
下の図をみてください。
参考文献① 「前職を辞めた理由」より引用
前職を辞めた理由として、
「職場の人間関係に問題があったため」
「結婚・出産・育児のため」
という項目が上位になっています。
また、前職が「介護関係の仕事」か「介護・福祉・医療関係以外の仕事」かによっても、傾向に差があることがわかります。
・前職が「介護関係の仕事」の方々
「職場の人間関係、他の良い職場がある、法人の理念」など、「職場環境」に関する項目が多い傾向にあります。
以前の職場では、仕事へのやりがいを感じることができなかったのかもしれません。
・前職が「介護・福祉・医療関係以外の仕事」の方々
「結婚・出産・育児、将来の見込み」など、「働き方やキャリア」に関する項目が多い傾向にあります。
将来に不安を感じたり、生活と仕事のバランスを考えて、介護分野への転職を決めたのかもしれません。
ワークライフバランスと離職の関係
離職の要因として「結婚・出産・育児のため」という項目が上位にあがっていました。
仕事と生活のバランスであり、ワークライフバランス(以下、WLB)の問題とも言い換えることができます。
今後は、上記の項目に加えて、両親や祖父母の介護なども、重要な要素として入ってくるでしょう。
また、WLBが充実していると職員満足度も高まり、離職率は下がります。
さらに、WLBの充実により、向上した職員満足度も離職率の低下に寄与してくるとされています(参考文献②)。
人生の契機で、仕事を辞めるかどうかを考える方々は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
できるかぎり、制度の充実や面談など、WLBに対する対策をしておく必要があります。
管理者と現場職員の職務満足度の違いから生じる離職
管理職と現場職員が感じる職務満足度にはギャップが生じていることはご存知でしょうか?
・管理職の職務満足度を直接的に高める要因
介護技術(利用者へのニーズ対応、迅速な対応)、
情報共有(他施設や部署間の情報共有、利用者家族とのコミュニ ケーション)、
評価(給与や仕事に対する評価 )
となっています。
・現場職員の職務満足度を直接的に高める要因
職場環境(シフトの自由度や会議での発言のしやすさ)となっています(参考文献③)。
現場職員が発言しやすい空気感をつくりだすことも、管理職にとって、大切な業務の一つと言えます。
職務満足度に関する価値観のズレから生じる離職も可能性としてあるかもしれません。
介護職員の離職に対する施策(ヒトが働く意味)
職員の離職を防止するためには、働きやすい環境をつくることは非常に大切です。
しかし、それ以上に「ヒトはなぜ働くのか?」を考えることが重要なことかもしれません。
下の図をみてください。
参考文献① 「現在の仕事を選んだ理由」より引用
介護職員が現在の仕事を選んだ理由で上位にあがっているのは、
「働きがいのある仕事だと思ったから」
「資格・技能が活かせるから」
「人や社会の役に立ちたいから」
となっています。
あなたの法人で、これらを全て満たしている職場はありますか?
職員は、働きやすさや給料だけではなく、“働きがい(役割)”を求めています。
何よりも先に取り組むべきことは、職員が“働きがい”を感じれる仕組み(職場環境)をつくることなのです。
前職(介護職)を辞めた理由として「職場の人間関係、他の良い職場がある、法人の理念」が上位にあがっていました。
この課題を改善させることこそが、働きがいのある職場環境を作ることにつながります。
そして、良い職場環境(土台)の上にしか、現場職員の“働きがい”は生まれません。
法人の理念や経営方針は、働きがいに直結してきます。
現場職員が働く理由になるのです。
未来が予想できない、「今」だからこそ、土台(職場環境)となる足元を見直してみませんか?
最後に
TRAPEは、現場の“働きがい”を向上させる取り組みを行っています。
厚労省 生産性向上モデル事業 ―介護現場革新会議 熊本県パイロット事業―
表層ではなく、深層にある、本質的な課題をともに解決していきましょう。
一緒に現場の改革に取り組みたいという方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
①公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働の現状について 平成30年度介護労働実態調査の結果と特徴