2021年4月から新設された入浴介助加算、皆さんの事業所では算定されているでしょうか?
難しい加算だと思われるかもしれませんが、ポイントを整理すれば難しいことはありません。
しかし、利用者の居宅へ訪問、計画書の作成など、今までの入浴業務とはオペレーションが大きく変わります。
そのため、現状の業務改善を行い、現場にゆとりを持っておくことが大切です。
ゆとりを持つという「引き算」の業務改善をした上で、加算の算定という「足し算」を行うことが重要となります。
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今回の記事では、算定要件をどのように解釈して、実際の現場ではどのようなケアをしていく必要があるのかをお伝えしたいと思っています。
入浴介助加算Ⅱが新設された理由とは?
そもそもなぜ、入浴介助加算を見直しがされ、上位区分で新たな入浴介助加算Ⅱが新設されることになったのでしょうか。下の表を見てください。どの通所介護事業所においても入浴介助加算の算定率が高いことがわかります。
今回の制度改正において自立支援への取り組みは非常に重要視されており、通所介護においても単に利用者の心身の状況に応じた入浴介助にとどまらず、利用者が自宅で自立した入浴を行うことで、利用者にとってwell-beingな日常を手に入れることにつながると期待がされているわけです。
これらを踏まえて、算定率の高かった入浴介助加算を、利用者の自立支援へとつなげるために入浴介助加算Ⅱが新設されたのです。
要件の整理と解釈
医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員等が利用者の居宅を訪問(※個別機能訓練加算で行う居宅訪問と併せて実施可能)し、利用者の状態を踏まえて浴室における利用者の動作・浴室の環境を評価すること。
利用者の住まいへ訪問して、入浴環境を観察したり、利用者本人や家族とコミュニケーションをとりながら、入浴動作に関わる一連の動作を情報収集することが必要です。
入浴動作と言っても、浴槽につかるだけが入浴動作ではなく、浴室までの移動や衣服の更衣動作なども含まれてきます。
利用者の住まいの入浴環境や利用者の動作を具体的にイメージすることで、どのような介助が必要なのかが分かってくるのではないでしょうか。
機能訓練指導員等が共同して、利用者の居宅を訪問した者との連携の下で、利用者の身体の状況や訪問により把握した利用者の居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること。
訪問時のアセスメントしたスタッフも含め、多職種のチームで計画を立てることが大切です。
入浴介助は訪問したスタッフだけが行う業務ではなく、さまざまなスタッフが関わっています。
チームで対話を繰り返し、利用者の入浴動作に関わる一連の動作のイメージを共有していくことが重要です。
「〇〇さんが行う更衣のどの部分に介助が必要なのか?」と介助内容をより具体的にしたり、「今行っている洗髪介助は本当に必要なのか?」と当たり前を問い直す時間が必要です。
チーム内で対話を繰り返すことで、入浴介助に関する共通認識が生まれてきます。
共通認識が生まれることで、スタッフ間における介助のばらつきも減少するはずです。
入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行うこと。
通所施設の環境で漠然と練習するだけでは自立支援への効果は乏しいでしょう。
チームで対話して作成した入浴計画では、利用者の住まいの状況を踏まえて、どこに介助が必要かが整理されたものになっているはずです。
利用者や家族にとって、いきなり住まいでチャレンジすることは、「本当にできるのか?」「危なくないのか?」と、不安になってしまうことがあるかもしれません。
だからこそ、通所施設で住まいに近い入浴環境をつくり、利用者さんが通所施設で模擬練習をすることに意味があるのです。
少しずつ「小さいできた」を積み重ねていくことで、利用者は自信につながります。
家族とも「小さいできた」を何度も共有しておくことで、「もしかしたら家でも入浴できるかもしれない」という前向きな感情を引き出すことができます。
これらの要件は、全て自立支援に向けての手段となっています。
もっとも大切なことは、利用者が自分自身の力で、あるいは家族やヘルパーなどのサポートによってそれぞれの住まいで入浴できるように支援していくことです。
利用者により良い暮らしを送ってもらうためにも、ぜひチャレンジしていきましょう。
入浴介助加算Ⅱに求められるのは、アセスメント能力!?
ここまで、入浴介助加算Ⅱが新設された背景や、要件の解釈をお伝えしてきました。
加算を算定していく上で、何が一番大切なのかと問われると、間違いなく「アセスメント能力」です。
「家では、40㎝のシャワーチェアを使用しているから、通所施設でも使っています」
「家では、右足から跨いで浴槽に入るから、通所施設でも右足から入ってもらっています」
「上肢が挙がらず、後頭部だけは洗うことができないから、介助を行っています」
など、加算を算定するためには、「なぜ、このような介助をしているか」を説明できる必要があります。
基本的な入浴動作のアセスメントができるようになると、実際の入浴介助がより意味あるものになっていくはずです。
すぐに入浴介助加算Ⅱを算定するのではなく、はじめは今行っている入浴業務を見直してみるのもいいかもしれませんね。
さらに学びたい方へ
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プロフィール
橋本康太(ケアワーカー/理学療法士)
所属 TRAPE インターン、某社会福祉法人
TRAPEにて介護事業所における組織開発や人材開発を学びながら、自身でも介護事業所の設立に向けて準備中。