「介護職って 〇〇屋さん?」
みなさんはどのように答えられるでしょうか?
介護職とは何をする職業なのでしょうか?世間はどのようなイメージをもっているのでしょうか?
HELPMAN JAPANが全国の介護職非従事者を対象に行った調査によると、介護職のイメージとして「精神的にきつい仕事が多そう」「体力的にきつい仕事が多そう」「仕事にやりがいがあまり感じられにくそう」などの項目が上位にあがっていました。これは事実なのでしょうか?調査では、働く実態とイメージに大きな乖離があると報告されています。
では、なぜ実態とイメージに大きな乖離が生まれてしまっているのでしょうか?
30年前、介護は家族が行うものであり、内容は主に生活援助でした。そして2000年に介護保険ができてからの介護は、介護の専門職が行う排泄介助・食事介助・入浴介助という身体介助時代となりました。そして現在、介護は暮らしを再構築する(Re construct)ことへと進化してきています。
そして、このように介護の在り方が変化しているということは、介護を提供する介護職の在り方も変化しているということです。しかし、この進化している介護の在り方を世間のみなさんにお届けできていないことが、実態とイメージが食い違う大きな要因ではないでしょうか。
「介護」という言葉の成り立ち・意味から紐解いてみる
介護の「介」という漢字は
① 間に入ってとりもつ
② 世話をする
「護」は
① 目を離さないでじっと見る
② 見守る
③ こっそりと様子を見る
④ うかがう
⑤ 大切なものとして扱う
⑥ 見守ってお世話する
などの意味をもちます。
今までの介護の中では「見守ってお世話をする」という意味合いがアクセント強く用いられていたように思います。
一方、これからの介護は「見守る」「うかがう」「大切なものとして扱う」そして「間に入ってとりもつ」などの意味をより強調して用いていくようになるのではないでしょうか。もちろん、今まで同様状況に応じて「見守ってお世話をする」という側面も大切なことは言うまでもありません。
介護の在り方が変化してきた背景
人口動態の変化、テクノロジーの進化など社会の在り方が大きく変化していることによって、個人の在り方・生き方を最大限尊重することを重視する世の中になってきたということが大きいでしょう。
その個人にとってwell-being(よりよい状態)な日常を手にいれる。
それは基本的に他の誰かに干渉されることがないということだと思います。
そして個人の生き方を尊重するということは、みんなが今までの固定化した視点を一度解き放って、多様な視点を持ってみるということでもあります。
個人の生き方が尊重される中には、何かしらの要因で日常生活が行いにくくなった、介護を必要とする方(要介護者)ももちろん含まれます。
ここで介護サービスの提供について考えてみると、今までは専門職が答えをもっていて、それを介護が必要な個人に提示・提供することがメインとなっていました。
しかしそれでは個人の在り方・生き方を最大限尊重し、その個人にとってwell-beingな日常を手にいれるサポートにはなりにくいことも分かってきました。
大切なことは、あくまでその個人が自己決定・自己選択ができるという自律性がそこに担保されているかどうかなのです。だからこそ徹底的に介護職はその個人の立場にたち、伴走をするのがこれからの介護職の在り方なのです。
そのためには、その個人のことを知ろうとすることが何よりも重要で、優先順位第一位となります。
だからこそ「見守る」「うかがう」「大切なものとして扱う」という要素が非常に重要なのです。これを専門的には「アセスメント」と言ったりもします。
アセスメントすることが目的ではなく、その個人のwell-beingな日常を生み出すための材料となる情報を得て、それを活かすことに大きな意味があるのです。
得た情報を活かす際には、試行錯誤を繰り返しながら「個人と別の人」または「個人と地域やサービス」などをつなぐ、つまり「間に入ってとりもつ」ということがとても重要となるのです。そして、これも介護職の今後の大きな役割となります。
改めて、介護職って 〇〇屋さん?
何かしらの要因で日常生活が行いにくくなった個人が、自分ひとりの力で以前のような自分にとってwell-beingな日常を取り戻すことは難しいことが多いのです。
しかしそんな時に、その個人の可能性を信じ、ともに試行錯誤してくれる介護職がいれば要介護状態になった方々でも自分らしいwell-beingな日常を再び手にすることができるのです。
デザイナーの佐藤ナオキさん(nendo代表)は、デザインとは「日常のちょっとした出来事を見逃すことなく、そこから何らかのアイデアを抽出すること」だと言っています。
個人の人生・生活には正解はありません。個人のwell-beingは十人十色です。
まさに介護職は、毎日介護現場で利用者さんのことを知ろうと対話を重ねて向き合い、ちょっとした個人(利用者さん)の出来事について専門職間でも対話し、そこから生まれた情報と情報を重ね合わせて新たな仮説というアイデアを立て、それをみんなで試行錯誤するということを実直に行っているのです。
そうです、介護職はデザイナーなのです。
出会った方の何気ない日常をwell-beingに溢れたものに変化させていくために日々対話し、創造しているのです。
介護はクリエイティブな仕事なのです。
それではもう一度この記事の最初に戻って、最初の問いに大きな声で答えてみてください!
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