個別機能訓練加算を算定するだけでは終わらせない。利用者の自立支援につなげるために必要なこと!

令和3年度から介護保険報酬改定により、個別機能訓練加算についても見直しがされました。
皆様の事業所では算定されていますか?

算定されている介護事業所においても、算定要件を満たすことに追われて、本当にこのままでも良いのか?と疑問を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の記事では、見直しがされた個別機能訓練加算の要件を整理するとともに、どうすればより良い自立支援につなげることができるのかをお伝えさせてもらいます。

個別機能訓練加算が見直しされた理由とは?

まずは以前の個別機能訓練加算について整理する必要があります。

上図のように個別機能訓練加算ⅠとⅡに分けられていました。

個別機能訓練加算Ⅰでは、利用者の身体機能の向上を目的にグループで行われていました。
個別機能訓練加算Ⅱでは、利用者の生活機能の向上を目的に小集団または個別で実施されることになっていました。

しかし、以前の個別機能訓練加算には、以下のような課題がありました(参考文献②)。

課題①:加算の算定率が低い

現行の個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱを両方算定している事業所は、20%~45%で規模が小さい事業所ほど算定率が低い傾向にありました。

課題②:加算を算定しない理由

算定しない理由の1位は、機能訓練指導員の配置が困難であるからとなっていました。
また、加算算定に取り組む余裕がないということや計画書の作成が難しいという、業務改善や人材育成の課題も上位に入っていました。

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課題③:訓練内容に差がない

参考文献①より引用

個別機能訓練Ⅰ・Ⅱにおいて、運動機能の向上に関する訓練を行われていますが、生活機能に関する訓練は行われることが少ない傾向にありました。

特に個別機能訓練Ⅱは、生活機能の向上を目的としているのにもかかわらず、生活機能に関する訓練が少ないことが課題でした。

改定後の個別機能訓練加算の要件を整理

上述したように、以前の個別機能訓練加算には、「加算の算定率」「訓練内容」に課題がありました。

参考文献②より引用

そして、上図のように、利用者の自立支援につなげるために個別機能訓練加算の要件が見直しされています。

以前の個別機能訓練加算ⅠとⅡでは、訓練項目は、身体機能の向上と生活機能の向上に分かれていましたが、新設された個別機能訓練加算Ⅰではどちらの訓練内容も含まれることになりました。

以前の個別機能訓練加算Ⅰでは、グループ(人数制限なし)で実施可能でしたが、5人以下の小集団又は個別での実施のみとなり、より利用者の個別性を反映させる必要があります。

また、個別機能訓練加算Ⅱは、科学的介護システム(LIFE)へ計画書の情報を厚労省へ提出しフィードバックを受けさらに改善をしていくことで、20単位/月の加算の算定が可能です。

これからは、ただ機能訓練を行うだけではなく、より一層、利用者の自立支援につなげる(成果を出す)機能訓練が必要となってきますね。

成果を生み出すために必要なサイクルとは!?

個別機能訓練加算を算定するためには、機能訓練指導員を適切に配置した上で、「①利用者の居宅訪問」「②個別機能計画書の作成」「③本人・家族への説明」「④再評価(見直し)」のサイクルを回す必要があります。

上記①〜③の算定のサイクルを行うには、労力が必要です。
現状の逼迫している業務の中に組み込みには難易度が高いでしょう。

しかし、ある方法を行えば算定はどんな事業所でも無理なく行えてしまいます。

それは、業務改善という「引き算」をした上で、いいケアを行う(結果として加算算定)という「足し算」を行なっていくという方法です。

いいケアを行う(結果として加算算定)という「足し算」をおこなう土台作りとして行う業務改善について知りたい方はこちら

「まだ算定していないけど、算定を予定している。」という介護事業所には業務改善を行なった上で加算算定に望むことをお勧めします。

そして、加算算定のために、上記のサイクルを回すのではなく、どうすれば利用者のウェルビーングにつながるのかという視点でICFを有効に活用しながら、関わることが非常に重要です。

利用者のウェルビーングを追求しようすると①〜③のサイクルを回すことが大切となります。

① 現在はどのような状況で、在りたい状態に向かってどのようなことをしていく必要があるのかを考える(利用者の居宅訪問・個別機能訓練計画書の作成)。

② 在りたい姿に向かって、現場のスタッフだけではなく、本人も家族も主体性を持って取り組む協働関係を構築する(本人・家族へ説明)

③ 現在の方向性で合っているのかの確認を行い、さらに計画内容に改善を加える(3ヶ月に1回以上の見直し)。

利用者のウェルービーングを追求すると、加算も取れていたという、利用者の自立支援と加算(事業所収益)の一石二鳥となる状態が理想的です。

そして、加算要件の一つ一つの項目に対して、「なぜこの要件を満たす必要があるのか?」と深い洞察をすることで、チームメンバーとStoryを共有することにつながり、介護事業所全体で取り組みやすくなります。

 

成果を生み出すために必要なサイクルの①〜④の各要素について具体的にみていきましょう。

①利用者の居宅訪問

利用者が生活する環境をアセスメントするために非常に重要なことです。

介護事業所という非日常的な環境で単純に運動が上手にできるようになったとしても、利用者の生活に直結するとは限りません。
だからこそ、利用者が日常的に過ごしている居宅を具体的にイメージし、理想の状態から逆算して訓練することが大切です。
居宅の具体的なイメージが出来なければ、目的や目標設定も曖昧になってしまいます。

もし、利用者の自宅で入浴することが難しいのであれば、居宅環境においてどのような入浴動作になるのか詳細にアセスメントする必要があります。

例えば、浴槽の跨ぎ動作に課題がある利用者だとします。

居宅でのアセスメントが不十分であれば、「浴槽を跨ぐために下肢筋力の向上」と目標が曖昧になります。
これでは、立って跨ぐのか、どれくらいの浴槽なのかなど詳細な内容が分からないですよね。

十分にアセスメントができていると、「椅子に座った状態で、50㎝浴槽を右から跨ぐため、右下肢の筋力を向上」のように、より具体的になります。

利用者の居宅訪問は、個別機能訓練の目的や目標を決めるために重要な業務なのです。

入浴動作の詳細のイメージを掴みたい方はこちらから

②個別機能計画書の作成

現場スタッフ一丸となり、チームで個別機能訓練を進めていくために重要な過程です。

利用者や家族と対話をしたり、利用者の居宅を訪問した情報をもとに、目標設定と訓練内容を記載していきます。計画書の内容は、機能訓練指導員だけではなく、現場の介護スタッフや生活相談員とも共有していくとより成果が出やすいでしょう。

より成果を出すためには、個別機能訓練を実施している時間も大事ですが、サービス提供時間を通じてどのような過ごし方をしてもらえるかというマネジメント的な視点も重要です。

上述した、浴槽の跨ぎ動作であれば、介護事業所で行われている入浴介助の時にも実践すれば、個別機能訓練とは直接結びつきませんが、良いADL訓練となるでしょう。

そのためにも、チーム内では「なぜこの利用者は個別機能訓練加算を算定しているのか」ということを常々、共有しておくことが大切です。

③本人・家族への説明

利用者本人・家族の中には、「介護事業所の言われるようにします。」と十分に個別機能訓練加算の目的を理解することなく、同意していることもあります。

理解を得られていないまま、個別機能訓練を進めると、介護事業所では動作がスムーズにできるのに、家族からは、「危ない」という理由で自宅内での動作を制限されることが予想されます。

「自宅内での動作を制限してしまうと、生活不活発となり、長期的にはデメリットが大きくなること。」「個別機能訓練をすることで、現在の生活を維持・快適にできること。」「これは家族にも大きな影響が生じる。」ということを丁寧に家族に説明することが大切でしょう。

利用者だけではなく、家族にも影響があることであることを理解してもらい、家族も「一緒に」チャレンジしていく体制を整える必要があります。

④再評価(見直し)

個別機能訓練加算は3ヶ月に1回以上、①〜③を行い、再度アセスメントを行います。

①〜③の手順を踏んで、実際に個別機能訓練を開始します。当然ですが、開始直後と数ヶ月後では利用者の心身の状況や家族の思いや負担などの状態が異なります。

利用者や家族の状況も踏まえて、このままの方向性で良いのか、それとも修正する必要があるのかを検討するために再評価する必要があります。

しかし、再評価の時だけ、利用者や家族の状況を把握するば良いというわけではありません。
日々の送迎業務で家族と接するときに小さく対話を行い常に情報をアップデートしておくことが重要です。

数ヶ月に一度だけの情報更新だと、大きな方向転換を伴うことがあります。大きな方向転換を急に行うことは利用者や家族、介護事業所にとっても負担が大きくなるはずです。

日頃から、小さく対話を行っていると小さいズレの時に気づくことが可能となり修正にかける負担も少なくなるでしょう。

そして、利用者や家族との情報共有の際は、①〜②の段階で目的・目標設定を具体的に行い、何が改善して、何が改善しなかったのかを適切に評価することが大切です。

さいごに

利用者をウェルビーングに導くためには、個別機能訓練加算の算定に必要な手順をしっかり解釈して、なぜ必要なのかを理解しながら進めることが重要です。

しかし、個別機能訓練加算の業務に慣れるまでは、算定することに負担を感じることになると思います。

だからこそ、冒頭記載したように事前に業務改善を行い、現場に時間的にも精神的にもゆとりを生ませておくことが必須です。

利用者のウェルビーングのためにも、事業所の収益のためにも、個別機能訓練加算の算定にチャレンジしていきましょう。

参考文献

参考文献①社保審-介護給付費分科会 第188回(R2.10.15)

参考文献②社保審-介護給付費分科会 第199回(R3.1.18)

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プロフィール

橋本康太(ケアワーカー/理学療法士)

所属 TRAPE インターン、某社会福祉法人
TRAPEにて介護事業所における組織開発や人材開発を学びながら、自身でも介護事業所の設立に向けて準備中。