日々の排泄ケアを利用者の自立支援につなげるために必要なアセスメントの視点

利用者の尊厳を保つためにも、自立支援を促すためにも「排泄ケア」は重要です。

「排泄失敗が多くなってきたから、尿とりパッドを大きなものにしてみようかな?」

「家でも失敗があるみたいだから、ポータブルトイレを設置しみたらどうかな?」

というような会話は皆様の介護事業所でもあるのではないでしょうか?

尿とりパッドの変更やポータブルトイレの設置という方法を選択するのは何故か説明できることが重要です。

しかし、知らず知らずのうちに、利用者の「できる」を奪っている可能性もあります。

今回の記事では、利用者の排泄ケアで自立支援につなげるために必要なことをお伝えさせてもらいます。

排泄をする意味とは?

利用者の方々にお話を聞くと「できれば、排泄は最後まで自分でやりたいな」という声が聞かれます。

国民性やその人によって価値観は異なりますが、上記のような価値観を持たれている方も多くいらっしゃるため、排泄という行為はその人の尊厳を保つためにも重要なことです。

また、尊厳だけではなく、排泄の自立が難しくなってしまうと様々な制限が出てきます。

排泄に悩みが生じると、「外出する時に、排泄を失敗してしまったらどうしよう…」と不安になります。

外出するのが億劫になり活動や社会参加の幅が狭くなることで、生活不活発に繋がりさらに身体状況が悪化するという悪循環を引き起こします。

排泄をできる限り自立して行えるということは、精神的にもQOL(生活の質)を維持・向上させるためにも重要なのです。

排泄ケアの自立支援を行うためには、まずは排泄という一連の動作の流れを把握する必要があります。

排泄の一連の流れをまとめてみよう

利用者のできるを活かした排泄ケアを行うためには、そもそも「排泄」がどのような動作となっているのかを整理することが必要です。

排泄は単純に排尿と排便をする活動ではないことが理解できるのではないでしょうか。

尿意を催すという「感覚や認知の問題」、トイレまで移動するという歩行をはじめとした「移動能力」、ドアの開け閉めという「移動+上肢運動」、下衣の上げ下げという「立位バランス+上肢運動」

単純な動作だけではなく、様々な複合的な動作が組み合わさりながら、「排泄動作」が行われています。

「利用者の排泄が難しくなってきている」と一言でまとめるのではなく、排泄の何が難しくなっているのかをアセスメントする必要があります。

1~18の過程を列挙しましたが、どこで難しくなっているかで、介入すべきポイントは全く異なるのです。

介入すべきポイントのアセスメントができていなければ、過介助を招き自立支援と反したり、そもそもの困っていることへの課題解決ができません。

まずは、1~18の過程でどこに難しさを感じてるのかを大まかにアセスメントすることが大切です。

アセスメントすることで自立支援を促せる

ここからは、アセスメントをどのようにして自立支援につなげるのかをお伝えしてます。

もし利用者の排泄動作が難しいと感じたら、上図で示した1~18の過程を頭の中でイメージしながら利用者本人や家族から丁寧な情報収集をすることは必須です。

「尿意は感じますか?」「トイレまでいくことは出来ていますか?」と仮説を立てながら一つずつ難しを感じるポイントの当たりをつけていきます。

利用者や家族から口頭での情報収集だけではなく、どのような時に排泄が難しくなりそうなのか日々の行動を観察したり、利用者の居宅へ伺い居宅環境を教えてもらうことも大切です。

課題を抽出することができたとしても、トイレまでの環境は人それぞれ異なります。

利用者がどのような環境で過ごしているのかを利用者個人の能力と環境の両側面からアセスメントすることが必要です。

環境因子に関して学びを深めたい方はこちら

例えば、利用者や家族から情報収集を行い「② トイレまで移動する」が課題としてあがったとします。

上図からも分かるように、トイレまで移動するためにはさらに細かく要素が分かれています。

 ベッドから起き上がる

もしベッドを使用している利用者ならば、寝返りをして起き上がります。

寝返りや起き上がりの難しさには、ベッドに柵をつけたり、ベッドについてある電動モーターを使用して起き上がるときの補助をしてみるのも良いかもしれません。

また、利用者によって寝返りが行いやすい方向も違うため、利用者に合わせてベッドの向きを変えてみるのも一つの方法です。

ベッドから立ち上がる

立ち上がるためには、まずは安定した座位が必要です。

座位が不安定な状態では下肢にも体幹にも力が入れることが難しいため、まずは身体が傾いたりせずしっかり座ることができるかの確認をします。

もし、難しいのであればベッドの柵や前方に机などの家具を配置して、体幹だけではなく上肢を使ってバランスを取れるように環境を整えることも必要です。

そして、立ち上がる時に必要なのは、体幹の前傾です。
まずはベッドの高さが利用者にあっているか確認をしましょう。

ベッドが高すぎると、足底が床に着かないため体幹を前傾させることが難しくなります。
ベッドの高さが低すぎても重心が後方へ移動してしまうため体幹の前傾をさせることが難しくなります。

利用者の足底が床にしっかり着いた状態で、膝の角度が80~90度くらいになるように調節すると良いでしょう。

立ち上がる時には、体幹・殿部・大腿部・下腿部の筋肉を主に使用します。

筋力が乏しく立ち上がることができないのであれば、前方置き型手すりを設置するなどすると、体幹の前傾をさらに促すとともに、上肢の筋力も使いながら立ち上がることができます。

居室内や廊下を移動する

ここでは、排泄に間に合うまでの移動速度が確保されているか、移動中に転倒せず安全にトイレまで辿り着けるかの視点が大切です。

歩行が難しければ、杖やシルバーカーのような歩行補助具を使用することも検討する必要があるでしょう。

利用者によっては車いすを使って自分で漕ぐ方が速く移動できる場合もあるため、柔軟に対応することが大切です。

トイレまでの移動距離を短くするという視点で、ポータブルトイレも選択肢として重要になるのではないでしょうか。

移動時の転倒に関しては、歩行補助具を使用することは頭に浮かぶと思います。

さらに、歩行補助具に加えて、廊下に手すりを設置したり、家具を設置することで、バランスを崩しそうになった時に手の届く範囲に掴まれるような物があるとより安心でしょう。

利用者が移動する環境も大切です。

暗かったり段差があるとより転倒リスクが高まってしまいます。
夜中の暗い廊下を歩かなくても良いように、自動で電気が着くようにするのも良いのではないかと思います。

転倒する時は大きな段差だけでなく、小さい段差でもつまづくことが多いです。
ホームセンターなどには、小さい段差を補うような商品もありますので、参考になると思います。

転倒予防について学びを深めたい方はこちら

細かくアセスメントを行うことで、排泄の何に対してどのような介入を行うのかが明確になります。

さいごに

排泄ケアを自立支援につなげるためには、アセスメントは欠かすことができません。

利用者の排泄に対して、「どのような介入ができるかな?」と方法論に議論を最初にするのではなく、利用者の排泄がどのようなタイミングでどのような動作が難しくなっているのかをチームで対話し言語化することから初めてみるのが良いでしょう。

ぜひ、皆様の介護事業所でも排泄ケアの自立支援にチャレンジしてくださいね。

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プロフィール

橋本康太(ケアワーカー/理学療法士)

所属 TRAPE インターン、某社会福祉法人
TRAPEにて介護事業所における組織開発や人材開発を学びながら、自身でも介護事業所の設立に向けて準備中。