現場の介護スタッフがバーセルインデックスを効果的に活用するために知っておいた方が良いこと

令和3年度介護報酬改定では、ケアの質の向上を図ることを目的にLIFEが新設されたり、ADL維持等加算の算定要件が緩和されています。

どちらの加算も、バーセルインデックス(以下、BI)による日常生活活動(以下、ADL)の評価が必須となりました。

これから介護現場でもBIを活用していく場面は増えていくでしょう。

しかし、BIを使用してADL評価を行なったことがないという介護現場で働く方々も少なくないのではないでしょうか。

BIは、今後の介護報酬に向けても、利用者のウェルビーイングにとっても非常に重要な評価指標です。

今回の記事で、BIを理解して現場で活用してもらえると嬉しいです。

バーセルインデックスで評価する日常生活活動とは?

人が生きていくための機能全体を「生活機能」と言います。
ICF(下図)では、「心身機能・身体構造」・「活動」・「参加」が生活機能です。

高齢者の生活機能としては、基本的ADLがよく知られているのではないでしょうか。
基本的ADLとは、移動、食事、入浴、排泄、整容など身の回りの動作のことです。

しかし、生活機能には基本的ADL以外にも手段的ADL(IADL)も存在するのです。
手段的ADLには、交通機関の利用や電話の対応、洗濯、食事の支度、服薬管理、金銭管理など自立した生活を営むためのより複雑な活動や社会的役割を担う能力も含まれます。

ICFにおいては、基本的ADLと手段的ADLを合わせて「活動」にあたります。

BIは生活機能の中でも、基本的ADLを評価をすることに適した指標です。

基本的ADLは、利用者における生活機能の土台とも言えます。
利用者の生活や暮らしの可能性や選択肢を広げるためにも、基本的ADLの向上は非常に大切です。

だからこそ、BIを活用して利用者の基本的ADLの状況を把握することが重要なのです。

バーセルインデックスを効果的に活用するために、メリットとデメリットを整理

介護事業所では入浴が自立されている方でも、自宅では服の着替えなどを介助されていることもあります。
介護事業所で行われるADLと自宅で行われるADLには差がある対象者も少なくありません。

利用者のADLは、その時々の置かれている環境によって変わります。
BIにおいても、ADL評価をする環境によって点数が変わるという認識が大切です。

「デイサービスという環境では自立して得点が高いな。でも、家という環境においては同じ得点になるのかな?」というように、想像をしてみる(聞いてみる)ことが重要です。

BIはじめADL評価は、「利用者がADL評価時に置かれている環境において、どの程度能力を発揮できているか」をアセスメントしているという認識を持っておくことが大切となります。

上図から分かるように、BIは、「食事・移動・整容・トイレ動作・入浴・階段昇降・着替え・排便コントロール・排尿コントロール」の10項目が評価対象です。

評価は「自立・部分介助・全介助」の3つに分けられます。
自立度に応じて0点〜15点で評価を実施し、高得点ほど自立度が高くなります。

しかし、上述したように、利用者が置かれている環境において得点が変化します。
合計得点は100点ですが、満点だからといって生活の全てが自立しているとは限りません。

メリットとは?

BIは、評価時間や評価方法が簡便です。

BIは、合計点が100点と分かりやすく、0点〜15点(3段階~4段階)で評価します。
そして、評価項目も少ないため短時間で評価が可能です。

そのため、日々の業務に取り入れ、チームで共有することも比較的スムーズにできるのではないでしょうか。

デメリットとは?

BIは、評価指標が簡便ではありますが、利用者のADLを詳細に評価することが難しい傾向があります。

基本的には「自立・部分介助・全介助」の3段階の評価になるため、「どのような介助が、どの程度必要か」という具体的な介助内容までは、評価することができません。
スタッフ間で評価内容の捉え方の誤差が生じることがあります。

これらのデメリットを補うためにも、実際の介護現場でBIを活用する際は、具体的な介助内容をチームで共有することが大切です。

「具体的にどれくらいの介助をしているの?」
「どのような介助方法をしているの?」
「なぜそのような介助が必要だと感じたの?」

などと、利用者について対話を繰り返せば繰り返すほど、チームで納得感を持って、統一したケアを行うことができます。
また、価値観の違うスタッフ同士で対話をすることで、「〇〇な意見や考え方もあるのか」と視野を広げることにもつながります。

BIはじめ、評価指標に完璧なものはありません。
評価をして終了。ではなく、どうすればよりケアの質の向上に繋がるのかと考え続けることが必要です。

介護事業所の視点と利用者の視点で整理、ADLの評価の必要性を解説!

ADLの評価は、介護事業所においても、利用者にとってもますます重要視されることが予想されます。

介護事業所の視点

これから、介護事業所は「アウトカム(サービスの質)」がより追及されてきます。

引用:社保審-,介護給付費分科会,第178(R2.6.25)

介護サービスの質の評価の視点として「ストラクチャー(構造)・プロセス(過程)・アウトカム(結果)」があります。

ストラクチャー評価やプロセス評価では、サービス提供方法の効率化を図ったり、利用者の状態改善等の効果をあげようとするインセンティブが働きにくいという課題がありました。

LIFEの新設・ADL維持等加算の要件緩和や報酬単位数の拡充は、上述した課題を解決する施策とも言えるのではないでしょうか。

プロセス評価からアウトカム評価の比重が大きくなってきていることがわかります。

ADLの維持・向上は、アウトカム評価の大きな軸となるため、BIを活用してADL評価できる必要があります。

利用者の視点

ADL評価をする最も大切な目的は、利用者をウェルビーイングと導くためです。

ADLを改善したい!と思う理由は人それぞれです。
買い物に行きたいから(活動)という人もいれば、孫の世話をしたいから(参加)という人もいるでしょう。

ADLの改善をすることで、利用者のウェルビーイングの可能性や選択肢を広げることにつながります。
利用者のウェルビーイングには、ADLの改善を目的とするのではなく、その先をイメージすることが大切です。

利用者のウェルビーイングには、その利用者にとってなぜADLを改善させる必要があるのかというストーリーが明確になっていることが非常に重要です。

さいごに

BIをはじめ、どのADL評価も利用者の生活のごく一部を切り取った評価であることに注意が必要です。
ADL評価を実施したから、利用者のADLを全て把握できたと過信するのは避けた方が良いでしょう。

どのようなADL評価であっても、一つのADL評価から、何が言えるのかをチームで多角的に考えることに意味があるのです。

「自宅でのトイレ動作は自立しているが、近所の知人の自宅ではどうだろうか?」
「病院では入浴動作は自立しているけど、自宅の環境ではどうだろうか?」

などと、ADL評価の場面だけではなく、利用者の生活環境をイメージすることが大切です。

利用者の生活や暮らしをウェルビーイングへと導くために、ADL評価をチームの共通言語として、対話する一つのきっかけにしていくといいのではないかと思います。

 

参考記事

高齢者の生活機能
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai/seikatsu-kinou.html

高齢者の日常生活活動
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai/nichijou.html

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プロフィール

橋本康太(ケアワーカー/理学療法士)

所属 TRAPE インターン、某社会福祉法人
TRAPEにて介護事業所における組織開発や人材開発を学びながら、自身でも介護事業所の設立に向けて準備中。