介護経営者のみなさんと対話すると決まって出てくる声があります。
「うちのミドルリーダー、マネジメントをよくわかってなくて…」「うちのミドルリーダー、マネジメントできていないんだよね…」
一方、当のミドルリーダーからはこんな声がよく聞かれます。
「マネジメントなんて教えてもらったことがなく、どうしていったらいいかよくわからず不安で孤独なんです…」「経営者と現場に挟まれてつらい…」
両者の声を聞いて何か気づきませんか?
そうです。両者ともに抽象的にマネジメントを語っている、そしてミドルリーダーの具体的な役割について語っていないといことです。では、マネジメントとはどういうことなのでしょうか?ミドルリーダーの具体的な役割とはどういうことなのでしょうか?1つ1つ確認していき、マネジメント力が高いミドルリーダーを生み出す方法をみていきましょう。
マネジメントとは
「マネジメントの父」と呼ばれるドラッガーは、「マネジメントは組織に成果を上げさせる機能や仕組みである」と述べています。つまり組織の人材を生かし、その人々が自己実現を果たし、結果として組織の目的を達成し、最終的に社会貢献できる組織作りこそマネジメントが果たすべき役割だということです。
ここで注目すべきは、「組織の人材を生かし、その人々が自己実現を果たす」というところです。人材は現場にいるので、組織に成果をあげる源泉は「現場にある」ということです。そしてこの役割を担うのがそうミドルリーダーなのです。
マネジメント力を測る最も直接的な方法
リーダーシップIQの創設者であり、リーダーシップ研究者であるマーク・マーフィーは、「マネジメント力を測る最も直接的な方法は、そのリーダーのチームを観察することだ。」と述べています。つまりは「現場と向き合おう」ということです。TRAPEが厚生労働省事業で全国の介護現場に介入して「生産性向上」や「働きがい」を生み出した時も、弊社の組織開発サービスSociwellを通して全国の介護現場で「生産性向上」や「働きがい」を生み出しているときにも共通しているのは①「現場と徹底的に向き合っている」ということ ②「そのプロセスの中でミドルリーダーのマネジメントレベルが向上していく」ということです。
高いマネジメント力をもっているミドルリーダーの3つの特徴
さらにマーク・マーフィーは、高いマネジメント力をもっているミドルリーダーについて3つの重要な示唆をしています。
1.部下の仕事環境を整える
リーダーシップIQが行った「The State Of Leadership Development(リーダーシップ育成状況)」の調査によると、従業員の大部分が、自分のリーダーはチームメンバーの成功への障壁を取り除くために十分な対策を取っていないと感じていることが分かったということです。これは現場の人材の可能性を引き出すためにすべきをことを明確にしてくれているということでもあります。
組織の成果を生み出すために、人材を生かすために現場と向き合うこと(=よりよい現場にするために現場改善、業務改善)が最優先事項となるのです。
2.部下が新たなスキルを習得している
リーダーシップIQが行った調査からは、従業員の52%は新たなことを学ぶことが全く、ほとんど、あるいはたまにしかないと答えていたということです。ここから日々の現場において新たな学び・スキルを経験できる環境がとても重要だということがよくわかります。
現場改善・業務改善を行なっていくプロセスの中で、ミドルリーダーが基点となり職員同士学びを深め成長することができます。そして自分たちの手で組織をよりよくしていく経験ができれば、実感・自信・欲求が生まれます。そんな好循環は結果的に職員の仕事へのやる気が高まり(ワークエンゲージメント向上)、プライベートの充実度が増し、職員の定着やリファラル採用などにつながります。
3.部下が会社の戦略の根拠を理解している
リーダーシップIQの調査「Resistance To Change Comes From These Five Factors(変化への抵抗を生む5つの要因)」は、3万1,664人の従業員とリーダーに対し、組織の戦略の裏にある根拠を理解しているかどうかを尋ねた結果、組織の戦略の根拠をよく理解していると答えた従業員はわずか15%だったようです。ここから見えてくるマネージャーの重要な役割は、経営者のビジョンや戦略を職員が日々の現場業務の中で理解したり、つなげられるような言葉や行動に置き換えることです。
一言でいうと、経営者と現場職員の「コミュニケーションのハブ役」ということができるでしょう。経営者のビジョンを現場は具現化することでサービスを生み出し利用者に提供して価値を創出します。実際には利用者と現場職員の間ではいろいろな事柄が起こるので、価値を創出する土台である現場で起きたことを経営者に伝えることで、経営者は適切な経営判断をすることができ現場で価値が生み出しやすくなりわけです。しかし、経営者と現場職員では距離が遠くていいコミュニケーションをとることができにくいのです。そこで登場するのが「ミドルリーダー」なのです。
ミドルリーダーを生み出す方法
ミドルリーダーを生み出すフローを下図に示しました。ミドルリーダー育成にチャレンジしたけれど失敗したという介護経営者の方の共通点があります。それは③候補者選抜➔⑥トレーニングの実施という具合に展開されているということです。
上記のような高いマネジメント力をもったミドルリーダーを生み出すためには、①〜⑧を順を追って丁寧に行なっていくことがとても重要です。特に②と④が重要です。
②「ミドルリーダー要件の明確化」:これは法人の目指すビジョンによって変わってきます。自分たちの法人(組織)が目指す未来に向かってどのようなミドルリーダーが必要なのかが決まってくるわけです。
④「トレーニングプランのデザイン」:社会人の成長は「経験学習によるものが70%」「その中でのアドバイスが20%」と言われたりすることからも、単なる座学ではなく、実際の現場改善・業務改善の中で現場と向き合うことが一番のトレーニングプランのデザインとなります。
まとめ
マネジメントとは、組織の人材を生かし組織の成果を生み出すことであり、その土台は「現場と向き合う(現場改善・業務改善)」にあるということでした。そしてその中核を担うのがミドルリーダーでした。マネジメント力高いミドルリーダーを生み出すためには、価値を生み出す源泉である現場づくりのプロセスの中でマネジメントスキルを磨き上げることが一番効率的かつ効果的でした。
つまり、現場改善・業務改善は経営戦略として取り組むことが重要であるということです。しかし、巷では現場改善や業務改善は非常に軽く捉えられていることが多いように思います。
今後の介護経営をもっとよりよいものにしたいと思っている介護経営者のみなさん!今こそ経営戦略として掲げ取り組むことをオススメします。
■ マネジメント力高いミドルリーダーを生み出したい方はこちら
■ 生産性が高く、働きがいが高い現場を生み出したい方はこちら
■ ICT・ロボットを現場で効果的に活用したい方はこちら
(引用文献)
Mark Murphy.”マネジメント力が高いリーダーに共通する3つの特徴”.Forbes JAPAN.2021.06.19,https://forbesjapan.com/articles/detail/41796