食事形態を変更する前に知って欲しい、「飲み込み」と「姿勢」の関係について

介護職の皆さんにとって、日々の介護業務の中で食事介助は多くの時間をかけるケアではないでしょうか。

また、時間だけではなく、飲み込みが難しい利用者には誤嚥や窒息に注意しながら行うので命に関わる非常に重要なケアです。

このように、時間スキルも求められるのが食事介助です。

利用者が食事中にむせ込んだり、食事時間が延長してしまうと、「食事形態が利用者に合っていないのかな?」と食事形態の問題と捉えたり、「上肢の動きの介助(スプーンの誘導など)が必要かな?」と考えることもあるのではないでしょうか。

実は食事の飲み込みには口や喉だけではなく、姿勢も大きく関わっています。
姿勢が整ってはじめて、“楽に”飲み込みをすることができるとも言えます。

食事と姿勢について理解できると、食事形態を変更したり、介助をするだけではなく、姿勢はどうなっているかなという視点も得ることができます。

今回は、飲み込みに姿勢がどのように関わり、日々のケアでどのようなポイントに注意すればいいのかをお伝えさせてもらいます。

飲み込みと姿勢の関係とは

まず、天井を向いて(頭を後ろに倒して)、水(もしくは唾液)を飲んでみてください。

いかがですか?

いつもよりも飲みにくいのではないでしょうか。

このように我々であっても、頭や頸部のポジションによって飲み込みに影響を与えていることがわかります。

頭頸部のポジションは直接、飲み込みに影響を与えるため注意が必要です。

頭頸部の筋肉は、飲み込みに関与するだけではなく、姿勢を保持する筋肉としても使われています。

頸部の筋肉は、頸部や舌骨だけではなく体幹にも筋肉が付着しています。
頸部や舌骨と体幹の筋肉に付着があるということは、頸部の筋肉が体幹などの姿勢の安定性と飲み込みに影響し合っていることです。

そして、ヒトには立ち直り反応という反射があります。

姿勢が崩れた時に、重力に対して、体幹や頭頸部を直立に保つ反射です。

椅子に座った状態で、自分の手で頸部を触りながら足を浮かせ、重心を後方へ移動させてみてください。

頸部の筋肉が緊張したのではないでしょうか。

このように、体幹の安定性が乏しければ、頭頸部の筋肉が立ち直り反応のため、飲み込みではなく、姿勢を保持する筋肉として使われてしまいます。

座位姿勢が不安定だと、頸部のポジション不良が起きたり、筋緊張が高まってしまうため、飲み込みに悪影響を与えてしまいます。

体幹機能が高い人であれば、座位姿勢が悪くとも修正することが可能です。
しかし、高齢者の場合は体幹機能も低下してきているので、ちょっした座位姿勢の変化で頭頸部に影響をきたします。

日々のケアで注意したい、食事中の座位姿勢のポイント

ここまで、姿勢と飲み込みの関係性をお伝えしてきました。

飲み込みを効率よく行うためには、下肢・体幹の土台が安定することが重要なのです。

ここからは、食事中の座位姿勢でどこに注意する必要があるのかをお伝えさせてもらいます。

①足底は床にしっかり着いているか

座位姿勢において、支持面となるのは殿部と両足の足底の3点です。
足底が床に着いていないということは、殿部だけで姿勢の安定性を確保しなければならないため、座位姿勢が不安定となります。

足底が床にしっかりと着けれるように、椅子の高さを調整したり、足の台をおくような工夫が必要です。

また、車いすのフットレストから床に足を下ろしているかも注意が必要です。
車いすのフットレストは、グラグラとしており、足底が着いていたとしても不安定です。

フットレストに足を乗せた状態だと、膝の位置が高くなってしまい、自然と骨盤が後方へ倒れてしまい、頭頸部にも悪影響を与えてしまいます。

②骨盤の位置は正中位か

高齢者の座位姿勢において多いのが、骨盤が左右のどちらかに傾くことと、後方に傾くことです。

左右のどちらかに傾くと、骨盤と脊柱は同じ方向に倒れますが、頭頸部は直立を保とうと反対側へ立ち直り、頸部の緊張に左右差が生じてしまいます。
頸部の筋力のバランスが悪くなり飲み込みが難しくなります。

椅子の高さが合っていなかったり、座り方が悪いと、殿部が椅子の前方にズレることが多くあります。
殿部が椅子の前方にズレると、骨盤が後方へ傾くことで、脊柱が円背のようになり(後弯)、頭部が前方に突出しながら頸部は上に伸びて(伸展)しまうような立ち直り反応が生じます。

つまり、上を向いて飲み込みをしているような状態になります。

③頸部や肩の緊張は抜けているか

姿勢が不安定だと、頭頸部の立ち直り反応が起こり過緊張を起こすとお伝えしました。
逆説的に言えば、頭頸部の過緊張がなければ、姿勢は安定しているとも言えます。

①、②のように姿勢の土台となる部分を整えたら、本当に良い姿勢なのかどうかを判断する必要があります。

頸部や肩周りを触ってみて、姿勢に介入する前と介入した後で、筋肉の緊張具合の変化をみるのが良いでしょう。

さいごに

上述したような姿勢に対して介入しても、利用者の身体機能が著しく低下している場合は座位姿勢で思うような効果は得られない可能性があります。

座位だけではなく、リクライニング/チルト機能が付いた車いす、場合によってはベッドも選択肢として持っておく必要があるでしょう。

しかし、まずは利用者の可能性を奪わないためにも、座位が取れるかどうかから始めてみることをお勧めします。

今回は、飲み込みに姿勢がどのように関わっているか、姿勢のチェックすべきポイントを説明させてもらいました。

食事中にむせ込みが増えたり、食事時間が延長してきた時に、すぐに食事形態の問題にしたり、過介助をするのではなく、そもそも飲み込みをしやすい環境になっているのかと「姿勢」に着目することを大切にしてもらえると嬉しいです。

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プロフィール

橋本康太(ケアワーカー/理学療法士)

所属 TRAPE インターン、某社会福祉法人
TRAPEにて介護事業所における組織開発や人材開発を学びながら、自身でも介護事業所の設立に向けて準備中。