認知症がある方に入浴を拒否されない、成功パターンを徹底図解!

介護現場において、入浴介助は多くの時間を使う大変な業務ではないでしょうか。
スムーズに業務ができるように、どの事業所も工夫をされていると思います。

そんな中「認知症がある方への入浴の声かけに困っている」という声をよく聞きます。

今回の記事は、認知症がある方への入浴の声かけをどのようにしたらスムーズに誘導できるのか図解して説明させていただきます。

最初に大前提として、入浴という動作は、他人の前で裸になる必要があるため、利用者の自尊心や尊厳を犯す可能性がある行為であるということをイメージして関わることが大切です。

なぜ、入浴を”拒否”されてしまうのか?

①入浴する理由がわからない

認知症により記憶障害が生じていると、いつ入浴したのか覚えておくことが難しくなります。
利用者からも「昨日の夜入ってるから、今日は入らないよ。」、「いつも入ってるから大丈夫よ。」などと言われたことはないでしょうか?
利用者にとって入浴に対する意味を感じることができていない状態だと言えるかもしれません。

②無条件な拒否反応

スタッフの言っていることが正確に理解することが難しかったり、入浴という言葉の理解が難しくなってしまうと、「何されるかわからない」と、恐怖や不安を感じてしまうことで、感情的に拒否反応を示されることもあります。
また、スタッフの声の大きさ、語尾のイントネーション、言葉使い、目線などで高圧的な態度と思われてしまうと、恐怖や不安を助長してしまう原因にもなるかもしれません。

しかし、①、②のようにお断りされる場合でも、工夫を凝らして浴室へ誘導し、いざ入浴すると、「気持ちいですね。」「さっぱりしました。」などと前向きな言葉が返ってくることも多くあるのではないでしょうか。

つまり、入浴そのものもが嫌なわけではなく、①、②をはじめとした、様々な理由で入浴したいという気持ちになっていないということだと思います。

それでは、入浴への誘導は、うまくいくときと、そうでない時の違いを図解させてもらいます。

入浴誘導の成功パターンと失敗パターンを図解

誘導成功パターン①(利用者に入浴したいという思いあり)

利用者本人が、入浴の理解ができていたり、入りたいと思っている時は、入浴への拒否はほとんどありませんよね。
つまり、利用者本人に「入浴する」というストーリーがある場合がうまくいきます。

誘導失敗パターン

利用者本人に、「入浴する」というストーリーがないのに、スタッフが無理にお誘いすると拒否されることが多くあります。
スタッフが、「お風呂に入ると気持ちいいですよ。」、「さっぱりしますよ。」、「身体が綺麗になりますよ。」という声かけをすることはよくあるのではないでしょうか。

しかし、利用者からすれば、どの理由もスタッフの都合なのです。
この声かけに加えて、誘導しなければならないという焦りから、スタッフの口調が荒くなってしまったり、無意識に利用者の腕を引いてしまうと、さらに利用者は不快感を覚えてしまい拒否反応が強くなってしまいます。

誘導成功パターン②(利用者に入浴したいという思いがない)

利用者本人に、「入浴したい」という思いがなかったり、入浴という行為の理解が難しい場合は誘導がとても難しいですよね。
入浴の必要性を理路整然と説明するよりも、感情の快・不快を大切の方が大切になるため、入浴という言葉に否定的な反応を示す利用者には、入浴という表現を避けることも重要です。

しかし、スタッフが利用者に働きかけて、「入浴する(もしくは、浴室へ行く)」というストーリーを意図的につくることで、誘導が成功することもあります。

意図的にストーリーをつくり出すために重要なことは利用者のアセスメントです。
利用者がどのようなことに関心や価値観を持ち意味ある出来事を過ごしてきたのかを知ることが必要です。

  • お花を生けることが好きだった人
  • 病院の先生に全幅の信頼を寄せている人
  • 有名企業に勤めていて、自分に自信を持っている人
  • 学校の先生をしてきて、人に何かを説明することが好きな人

それぞれの利用者によって、様々な背景があると思います。
利用者の状態をアセスメントするICFでは「個人因子」と言います。
利用者の個人因子をどれだけ把握しているかで、誘導の戦略が変わってくるのです。

例)病院の先生に全幅の信頼を寄せている人の場合

スタッフ:今日はどうされたのですか?
利用者:別に特に何もないですよ。
スタッフ:いつもの〇〇病院の〇〇先生のところへは最近も行ってるのですか?
利用者:この間も行ってきたよ。
スタッフ:そうなのですね。実はですね。僕は〇〇先生の教え子で、医者をしているんですよ!今日は、〇〇さんの診察をするために東京からここまできたんですよ。
利用者:おおお〜。そうなんですね〜。わざわざありがとうね〜。
スタッフ:いえいえ。とんでもないですよ!では、向こう(浴室)で診察させてもらっても良いですか?
利用者:よろしくお願いしますね〜。

実は、何度も入浴拒否や衣服の着脱の介助をさせてもらうことができない方への実際のやりとりです。
最初はうまく誘導できませんでしたが、個人因子を徹底的にアセスメントすることで、利用者にとって負担のかからない声かけができるようになりました。

スタッフの方が1人で、「うまく誘導できない。」、「私ってダメなのかな。」と悩むのではなく、現場のチームで取り組むことが大切です。
チーム内で、「なぜ誘導がうまくいかなかったのか」、「なぜうまく誘導できたのか」を共有することで成功する確率を高めることができます。

ぜひ、スタッフ個人で挑戦するのではなく、現場全体の課題としてチームで取り組んでみてくださいね。

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プロフィール

橋本康太(ケアワーカー/理学療法士)

所属 TRAPE インターン、某社会福祉法人
TRAPEにて介護事業所における組織開発や人材開発を学びながら、自身でも介護事業所の設立に向けて準備中。