都道府県介護現場革新会議・介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)を自治体向けに詳しく解説 第1回

都道府県介護現場革新会議・介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)を自治体向けに詳しく解説 第1回

「介護現場革新会議」「介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)」について、TRAPE的切り口でわかりやすく解説を行います。

本記事では第1回として、「生産性向上の取り組みは、介護の価値を向上するための手段」というテーマについて解説いたします。

はじめに

令和5年度より各自治体による「介護現場革新会議」「介護生産性総合相談センター(ワンストップ窓口)」の取り組みがはじまっています。

自治体の担当者の方々は、これから国のガイドラインに沿って、対応を進められる方も多いのではないでしょうか。

「介護現場革新会議」「介護生産性総合相談センター」を設置・運営するためのガイドラインは厚生労働省の「介護分野における生産性向上ポータルサイト」にて示されております。

https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei/localgov/index.html

介護事業所経営と外部環境の変化との関係性

現在、日本社会の構造は大きく変化しており、介護経営はまさにその影響を強く受けています。日本社会の構造の変化とは、人口構成、業界構造、経済状態、環境構造、顧客ニーズ、テクノロジーの発展などです。

人口構造という点からは、日本は少子超高齢社会であり、現役世代=今まで想定されていた働き手が減っていく中、2025年には団塊の世代が全員75歳以上となり、更に2040年にかけて85歳以上の人口が急増することが予想されています。この働き手不足は、日本の各産業、事業において大きなマイナスのダメージをもたらすと危惧されています。人手不足は全産業における共通課題だと言えます。

これは介護業界においても同じくであり、今後は人が減っていくことを大前提とした中で、現在の介護サービスレベルを維持し、増え続ける需要に対して一人の取りこぼしもなく介護サービスが行き渡るようにし、更に超高齢社会における長寿のウェルビーイングな生き方の提案を行える制度設計や事業所経営を行っていく必要があります。

今後成長する組織とは

社会構造が大きく変化していくことが大前提の中、今後目指していくべき介護事業所(組織)は、様々な外部環境に抵抗するのではなく、外部環境の変化に柔軟に適応することができる組織です。こういった組織がこれから成長していく事ができるでしょう。

つまりこれから成長する組織とは「ひと=働き手」が集う組織とも言うことができるかもしれません。

その背景として、社会構造が大きく変化し、人手不足が常態化した中では「ひと=働き手」の価値が向上するからです。働き手がいないとどんな崇高な理念を掲げていても実現できませんし、状況に合わせた柔軟な対応や取り組みを行うことができなくなります。この結果、組織はあるべき姿を手に入れることができず、不本意な結果を受け入れるしか無くなってしまうわけです。

これは介護事業所も同じです。制度改正があり、新たに加算を取ろうとしたり、テクノロジーを導入して活用しようとするなど、新しい取り組みを実施する際に、職員不足の状態が慢性化していて現場職員に余力がない場合、行いたくても実現が難しいという結果になります。

この職員不足の常態化を改善するためには、「人材の定着」、「人材の確保」が重要となります。

退職をしている方々の多くは自分たちの職場の現実に挫折している

人材が定着するということは、日々働いている職場が職員にとっていい状態であるということです。つまり働きがいの高い職場であるということです。これを裏付けるようなデータがあります。退職をしている方々の多くは自分たちの職場の現実に挫折してしまっています。

介護事業所への就職は友人・知人からの紹介が多い

人材の確保がどのように起こるのかというと、介護事業所の特徴としては、友人・知人からの紹介(リファラル採用)が大きな割合を占めるということがわかっています。

つまり、働いている職員が職場で良い体験をすることこそが、未来の仲間を増やすための一番の近道なのです。忙しく追われ、自分が思う活動ができない職場では、紹介などが生まれる確率が非常に低くなってしまうのです。

この現状をより良くするための取り組みのことを厚生労働省は「生産性向上の取り組み」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」などと呼んでいるのです。

介護における生産性向上とは何か?

生産性向上の取り組みは、人材の定着・確保、経営収支の維持・向上などに最終的に影響してくるため、経営戦略上最優先の取り組みとして行う必要があります。

なぜ、介護事業所が生産性向上の取り組みを行うのかという理由は至ってシンプルです。介護には大きく2人の登場人物がいます。「職員」と「利用者」です。この2人の登場人物にとっていい体験を生み出すことが本来介護事業所の存在意義なのです。図では黄色のアウトカム「目的」にあたります。

しかし現状はどうでしょうか。現場からは「人がいないので〇〇できない、忙しいので〇〇できない」などの声が施設サービス、在宅サービス共通で聞こえてきます。これは図では「課題」と記載しているところにあたります。

この現状と目的(在りたい姿)にはギャップが存在します。ギャップがあるにも関わらず何も手立てを打たないと、このギャップはますます広がっていきます。つまり状況は改善するどころか悪化の一途をたどります。

だからこそ、このギャップを縮めることが求められます。このギャップの縮め方が生産性向上の取り組みそのものなのです。そしてこれには取り組む順番があります。

介護事業所のマネジメント構築です。組織は「ひと」です。そのため、職員とともに理想の姿、課題、改善活動などについて対話を繰り返し、日々の業務に新たな意味づけ(業務棚卸し)をする必要があります。そして、アナログ的なアプローチを通じて可能性を引き出せる箇所に着手していくのです。これにより、職員は日常の業務に対する解釈や意味づけが変わり、改善や変革に対するポジティブなイメージが明確になってきます。

❷その上で、介護ロボットやICTなどのテクノロジーを導入・運用していくことよって、現場にとってテクノロジーが押し付けられたものでなく、自分たちの新たなパートナーとして迎え入れることができるようになるのです。

上記のような取り組みを行うことで、「成果」として、現場の時間的・気持ち的余力、変化の実感、創造的な活動時間の確保を行うことができるようになります。この土台があるからこそ、目的(在りたい姿)を手に入れることができるのです。

国の方針と経営者および自治体に求められる役割とは

「職員」と「利用者」にとってのアウトカム「目的」については、令和5年度秋の行政事業レビューとりまとめでも言語化されています。

つまり、単なる業務負担の軽減だけを目指すのではなく、それを行い、さらに介護の質の向上、利用者や職員のウェルビーイングを向上させ、その結果として人材の確保までつなげるイメージを持ってこれらの取り組みをデザイン&アクション(行動)するべきと整理されています。

そして、外してはいけない重要なことは、これらの取り組みは経営の本質的な部分であるということです。だからこそ、現状の課題に目を向け、望む姿とのギャップを埋めるための施策とマネジメントを機能させながら、自律的に実践していくことがこれからの介護経営者に求められます。これまでの介護経営は、国の提示する内容に従って実施することで、それなりの規模を維持・運営できていました。しかし、それは社会構造が比較的安定していた時の話です。現在のように人手不足が慢性化し、人・業務・組織風土マネジメントを詳細に行わないと、運営、そして経営が上手くいかない時代になっています。経営者は運営マインドから脱却し、本質的な経営を行う必要が生まれてきているのです。

しかし、言うは易く、行うは難しいです。実際、この数年で介護事業所経営者からは「取り組みたいがどうやって進めればいいかわからない」「見よう見まねで取り組んでみたが、途中で壁にぶつかり、そこから進めずにいる」といった声がよく聞かれるようになりました。最近ではICT導入補助金や介護ロボット導入補助金などの利用率が非常に高くなっています。これ自体は素晴らしい流れです。しかし一方で、「テクノロジー機器を導入したが職員が上手く利用できない」「倉庫に眠っている」といった運用面の課題も全国で聞かれるようになりました。

令和5年度秋の行政事業レビューでも委員から質問を受けて厚生労働省は以下のように答弁されていました。

  • 単に機械を導入するだけでは具体的な成果が出にくい
  • 導入に至る前のプロセスが大事
  • 導入後の改善、定着に向けたプロセスが非常に大事
  • だからこそ、伴走支援をきめ細やかくやっていく必要がある

介護事業所が生産性向上の取り組みの経験がない現在の状況では、積極的に伴走支援などを行い、より良い組織づくりに取り組む経験を得ることが必要です。なぜなら、これらの良い経験は組織全体に良い影響を与える可能性があるからです。また、外部サポーターによる伴走支援を最初に行うことが、その後組織全体に良い影響を生む傾向があるというアンケート結果もあります。これらを踏まえて、厚生労働省は後押し施策として様々な伴走支援メニューを補助金で提供しています。この補助金を運用するのは自治体の大きな役割です。

これは介護予防の視点からの地域づくりや、地域支援事業(総合事業)の展開においても基盤となり、高齢期の方々が地域でウェルビーイングな生き方を提案していくためにも、地域の介護事業所(専門職などの職員)の活躍が不可欠です。だからこそ、今後は超高齢社会を支える地域の資産である介護事業所を地域全体で一丸となって応援していくことが非常に重要です。

この後押しを行うための施策として、「介護現場革新会議」「介護生産性総合相談センター」や各種サポート施策などが考えられています。次回からは、これらの施策がそれぞれどのようなものなのかを詳しく見ていきたいと思います。

実績紹介

TRAPEが行ってきた生産性向上に関する取り組みをまとめております。

さいごに

次回は第2回「都道府県 介護現場革新会議とは何なのか?」」について解説していきます。

主な事業実績先
厚生労働省
静岡県
山形市
柏市
堺市
寝屋川市

全国老人福祉施設協議会
岡山県老人福祉施設協議会
介護労働安定センター大阪支部