日本では「総合事業」というものが各自治体で展開されています。
総合事業は「介護予防」や「自立支援」という軸となる考え方を各地域で普及展開するための手段として事業を行うというものです。その事業のなかに、(訪問型、通所型の)短期集中サービス事業(いわゆる通所サービスC型)というものがあります。
これは世界の国々で実践されている「リ・エイブルメント プログラム」とほぼ同じ内容のサービスです。現在、世界の国々でこのプログラムも注目を集めています。
今日はオーストラリアでの活動を紹介している記事をもとに考察してみたいと思います。
(記事より抜粋・要約)
本プログラムは、今から2020年6月まで、2,920万ドルかけて行われる取り組みで、オーストラリア政府の「More Choices For A Longer Life(より長い人生への更なる選択)に欠かせない要素である。」と高齢者および高齢者ケア担当大臣のケン・ワイアット氏は述べています。
ワイアット氏は「個人の強みや目標を重視することは自立維持に役立ち、また施設ケアを含むより複雑な支援ニーズを減らしたり遅らせたりできることが、研究で示されています。」とも述べており、本プログラムを政府あげて実施する根拠を述べています。
National Seniors(ナショナル・シニアズ)のCEOを務めるジョン・マッカラム教授は、「自宅でのケアが高齢者ケアの未来であり、高齢オーストラリア人の大半からも非常に好まれている。また、高齢者が自分の希望通りの選択を行えるようにすべきである。」と述べています。
Aged Rights Advocacy Service(ARAS、高齢者権利擁護サービス)の最高責任者を務めるキャロラン・バークラ氏もまた、この試験事業を歓迎しており、「的を絞ったリエイブルメントプログラムを通じて自立や自律を向上させる、的を絞った支援を提供することで、これは実現できる可能性がある。この試験事業が将来的な資金提供の取り組みの参考になるはずである。」と述べています。
オーストラリアにおけるこの「リ・エイブルメント プログラム」は、西オーストラリアとビクトリアで用いられているアプローチに基づいて、Commonwealth Home Support Program(CHSP:連邦在宅支援プログラム)に申し込む高齢者のアセスメントを行います。
そして参加者は全員「アクティブ・アセスメント」を受け、その後6〜8週間のプログラムを完了します。このプログラムで参加者は、自身の能力目標達成についてアセスメントや指導を受けるというものです。
Aged & Community Services Australia(ACSA、オーストラリア高齢者・地域サービス)のCEOを務めるパット・スパロー氏は、「高齢者のモビリティを維持することが重要。なぜならばそれは、健康やwell-being、自立へとつながっていくからです。」と述べています。
実はこのモデル事例は、2018年に大阪府寝屋川市で大規模に実証研究されたリ・エイブルメントモデル(こちら)とも非常に内容が似ています。
1人のひとのwell-beingな日常を追求すると、日本も世界も本質的に同じような取組にたどり着く、ということなんだと思います。
また、本事例では、このプログラム推進のために、政府から追加資金として最大500万ドル出されることになっているらしく、オーストラリア政府の本気度を感じます。
一方、日本では残念ながら総合事業が各地域でほとんど進んでいない現状があります。
どの事業を、どうやるか、というwhatとhowのみの視点を一度横に置いたうえで、why(なぜ)を問い直し、その上でwhatの議論をするというリデザイン、そして小さなTryで新たな方向性を打ち出していくことが今こそ必要なのではないでしょうか。
そのときのwhy(目的)はもちろん、1人のひとのwell-beingな日常を生み出すこと、ですよね。
「介護予防」や「自立支援」という制度で使われる言葉も、これが変わらない本質だとTRAPEは考えています。
情報元:https://www.agedcareguide.com.au/talking-aged-care/new-trial-to-help-older-australians-stay-mobile-and-independent (Nicole Pope)