介護予防とは、3つの要素で構成される
- 要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと
- 要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと
- 軽減を目指すこと
そして、以下のように一次予防〜三次予防として、定義がされています。
2000年(平成12年)に介護保険がスタートしたわけですが、その後の経緯の中であることが分かってきました。
それは要支援〜要介護1のいわゆる軽度者の人数が非常に多くなっているということです。
さらにその方々の疾患特性は、関節疾患・骨折・転倒・高齢による虚弱など、そのような状態になる前に事前に予防することができるものが多かったということが分かったのです。
国が「介護予防」を開始したが…
そのような背景により、2006年(平成18年)に「介護予防事業」が制度としてスタートすることになったのです。
その目的は、早期かつ適切に専門職が関わることで、軽度者という虚弱状態になることを予防し、健康なままでその方らしい日常を持ち続けてもらおう、というものでした。
しかしながら、現在軽度者の数は減少するどころか、後期高齢者全体の伸び以上に、増え続けてきました。
平成12年から平成29年まで、なんと3.6倍に増えているのです(後期高齢者は1.9倍ほど)
また、介護予防事業を一次予防と二次予防とで分けて実施しており、二次予防事業の実際の参加者は高齢者人口のたった0.7%(約23万人)で、ほとんど普及していないということでした。
そこで、一次予防と二次予防を分けて実施するのでなく、全体の繋がりをもって総合的に実施した方がいいということになり、”総合事業”の中で一般介護予防事業として実施することになりました。
“社会参加・つながり”の重要性に気づく
また、それまでの心身機能や生活機能の向上を重視する介護予防の概念を土台とした上で、「もうひとつの予防」(下図)の重要性が述べられるようになりました。
「もうひとつの予防」とは、地域や社会に参加し、住民同士がつながり、コミュニティが生まれ、その中で固有の”役割”をもつ状態に向けた環境設定、支援が重要であるということです。これは一次〜三次のそれぞれの予防フェーズに対して必要な要素でした。
さらに、それらの全ての予防を囲う重要な考え方として「ゼロ次予防」ということ概念が生まれました。
介護予防を効果的に進めるためには、本人の行動変容という目的のために、「自発性、モチベーションを喚起すること」が何よりも重要です。
また、ICFの考え方では、本人の健康状態は、心身機能や活動状況のみならず、本人を取り巻く生活環境(=環境因子)からも多くの影響を受けているという点を強調しています。
これらから、本人のモチベーションの源泉を本人の内発的な、自助努力のみに頼るのではなく、この環境要因を適切に調整することで、本人の意欲創出、行動変容につなげよう、というのが「ゼロ次予防」なのです。したがって、その具体的な方策は、地域環境や社会資源の整備、改善、ということになります。
実際、このような環境因子のデザインについては、専門職(現在は特にリハビリ専門職に注目が集まっています)がその専門性を生かすことで、上手に実施してくれるのではないかと期待感が高まっています。
これら一連の介護予防を効果的に推進するために、(総合事業を含む)「地域支援事業」という制度に衣替えをし、各地域での展開を促そうというのが現在の制度の趣旨ということです。